散文誌

日記・小説

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『ゼロの焦点』 松本清張

舞台は戦後間もない昭和三十年代初頭の日本。
東京に住む主人公、板根禎子は、周囲の女からは多少のやっかみを、男からは好奇の目線を注がれる
ようなそこそこの美人でありながら、戦後の煽りか、はたまた巡り合わせが悪いのか、そろそろ薹が
立ったと言われそうな二十六という歳になって、周囲の薦めにより、お見合い結婚に至った。
相手は一回り年上の、広告会社に勤める男だった。二年ほど前から北陸方面の出張所主任を勤めてお
り、近々、本社のある東京に栄転するという有望な男の風体は、広告業という職種とは不似合いな、
北陸の雪を思わせる翳りの中に、時折はっとするほど真逆な明るさを垣間見せ、内面の複雑さを物語
るようであった。
新婚旅行もそこそこに、業務の引継ぎのため北陸へと発った男は、しかしそのまま失踪する。
結婚したばかりの夫の、突然の失踪。ほとんど何も知らないと言ってもいい夫の影を追う中、度々起
こる殺人事件とともに、闇に包まれた夫の過去が明らかになっていく。

とまあ粗筋はこうだ。面白いことは間違いない。ただ、途中から犯人の目星がついていた、というか
つけさせられていたせいか、禎子の推理の流れが緩慢に思えてじれったいったらありゃしない。初読
はそのせいで終盤、身が入らず。これは二度三度と読んで初めて真価を味わえる類の本だと思う。

禎子の視点で紡がれる物語は、色々と釈然としないモノを残した。

1・夫の謎に迫る中、殺人が起き、禎子にはそれが誰の手によるモノなのか、ある程度の推理が出来
  ていたにも関わらず、警察には言わなかったこと。

普通なら言う。推理が間違っているという不安はあっても、殺人が起きているのに、何故言わない?
自分でケリをつけたいからとか、結婚したばかりとはいえ夫が関連した事件への疚しさだとか、色々
躊躇する理由があったのかもしれないけど、明記されていないから推測しかできない。
時代背景もあるんだろう。戦前まである種傲慢だった日本の男達より、思いのほかアメリカ人達は紳
士的であり、それが、それまで男性には卑屈的だった女性にとって新鮮な驚きとなっていたこと。そ
して、戦争により自信喪失していた男性に変わり、女性が占領軍に対して勇ましく立ち向かっていた
ということによって、それまでの男女間の価値観が変わったと、本書には書かれている。その結果、
日本の男達に対する不信感みたいなもんが無意識の底に芽生えていて、それにより禎子は躊躇したの
だろうか? 塵もつもれば、というし、一つ一つの要素が集まった所為、なのかなぁ。

2・夫の本の中に隠すように挟まれていた二枚の家の写真。何故そんなモノを撮ったのか?

これはホントにわからない。背景を考えれば、撮る意味も判らないし、とっておく意味も判らない。
必然性が分からないから舞台装置にしか思えない。でも禎子の視点で語られること、事件が終われば
物語りも終わるということを考えると、これは仕方のないことか。

3・納得のいかないラストシーン。

秘密を守るために殺人も厭わなかった犯人が、なぜ、あのような最後を向かえたのか? それまでの、
聡明で怜悧なイメージとそぐわないというか。因縁の地とでも言うべき場所で、印象的な詩をこの為
に用意したと言わんばかりのラスト。これまでもやもやしていた不満がこのラストで爆発した。
でもこれは時間を置いて再度読めば、また印象は違うのかもしれない。


面白いことは間違いない。ただ、推理小説としてはどうだろう? という感想。

読むきっかけはこちらの方のレビューから→RUNNERS LOW
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眠れる森 A Sleeping Forest

何か調べたい事がある訳でもなく、ただダラダラとネットサーフィンをしていると、ちらほら興味を惹かれる文章や画像にお目にかかることが多い。
気になったモノはとりあえずタブ化して、後でチェックするのが僕の流儀で、そのときも10個ほど溜まったタブを整理しようとしていた。10個もタブが溜まれば、短縮されたタブには、一文字ぐらいのスペースしかなく、「日」とか「G」とか「Y」とか、それだけを見れば何のことやら分からないものばかりだ。
最初のほうとなると、一体なにに興味を持ったのかさえ覚束ない。記憶力という点で、僕は小学生よりも劣っている自信がある。えばって言うほどのことでもないんだけど。

話が逸れた。とりあえず、僕は最初のタブからチェックしていく。何せ覚束ない記憶なのだから、自分がなにに惹かれたのか、それを再発見するのも一つの楽しみだ、ともいえる。

まあとにかく、僕は一つ一つ、タブを開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した。いつものサイクル。興味を惹かれたとしても、それに目を奪われるような事はあまりない。一通り読み、琴線にカスリもしない駄文を閉じる駄サイクル。時間は有限だと言うけれど、ニートの僕には関係の無いことと言える、なにせ毎日が日曜日なのだから。

閑話休題。

そんな駄サイクルを続けていくうちに、ふと目に留まった文言があった。

「眠れる森 A Sleeping Forest」

はて、どこかで見た覚えのあるタイトルだ。少しばかり考えて、それが眠れる森の美女だと分かった。
さらにggると、どうやらキムタクが出演しているテレビドラマらしい。キムタクが出てるドラマならミーハーの僕は全て見たはずだったが、これは見たことがなかった。あらすじを見るに、どうやらサスペンスモノらしい。
キムタコがサスペンスモノねぇ……。なんて思いながらも、暇だし観てみることにした。

どこで見たかは内緒です☆

――全12話。夕方から観始めて、観終わったのが朝方だった。一気に見ればあたりまえか。

感想。何話かは忘れたけど、中盤の辺り、浜崎が国府と同じ大学に通い、同級生だったことが発覚した時点で、ああ、こいつが犯人なんだろうな、ということは分かった。物語が進めば進むほど、浜崎の行動にはおかしな点がたくさん出てくる。犯人は間違いなくこいつだろう、しかし動機は? となると、ガッと嵌るような動機が見当たらない。もんもんとするうちに、最終話へ。ここで初めて、浜崎の口から動機なるものが聞かされる。しかし、それはなんとも味気ないものだった。横恋慕からの逆恨み、ってとこか。あまりに当事者たちの描写がないせいか、殺害動機を知っても、そんなことで……? と、思いたくなるぐらい、ドラマと僕の間に大きな剥離があった。
想像はできる。だが、感情移入はできない。例えば新聞などでこれと同じ事件を知ったとしても、さほど興味を惹かれないだろう。歴史の授業と同じようなものだ。何年にこれこれこういう事が起こった、と書かれてあるだけで、そこにドラマがないのだから。関係性の希薄。
まあ、こんなことを言い出しても薮蛇だ。そもそも主人公は美奈子だし、彼女の記憶というモノがキーパーソンだったのだから、殺害当時の関係者たちの逸話でも入れれば、冗長になるだろうし、犯人を出来るだけわかりにくく
したとしても、この殺害シチュエーションだとすぐにバれることは明白であろう。
とにかく、引っ張りに引っ張った割りには衝撃が足りなかったかな。

どこぞで「神ドラマ!」と言われているらしいけど、とても神()とは思えない内容だった。

という事で寝るとしようそうしよう――。


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(ハル)という映画を観た

物語は90年代の中頃。パーソナルコンピュータが日本にも普及し始めた頃、パソコン通信というインターネットを通じて他人とコンタクトを取ることが、一部のマイノリティたちの間で流行っていた時代。

アメフト選手として実業団に入ったものの、腰を悪くして選手としては終わってしまい、会社の営業マンに成り下がった(ハル)と、学生の時から交際していた恋人を事故で亡くし、どう生きていけばいいのかわからない(ほし)の、メールでの交流を描いた淡いラブストーリー。

今では当たり前のようにネットを介して他人と交流を深めることが出来るけれど、この映画の頃は、大変珍しいことだったんじゃないかな、と思う。
当時のPCの値段、ダイアルアップという接続方法、それに伴う回線費用。社会人か、もしくは裕福な家庭の子供しか持ち得ないものだっただろう。
そんな狭い世界で、ハルとほしは映画フォーラムという一つのHPの中で知り合うこととなる。
メールを通じて、お互いのことを、少しずつ知り、あっていく。その出会いと過程は、子供の頃の交換日記のような、隠しておきたい秘密の交流のようで、なんだかとても憧れるものがあった。
ラストシーンは、ネットの枠をこえて実際に会うシーンで幕を閉じる。なんだかとても印象的なシーン。二人はネットを通じて既に心で会ってはいるけれども、リアルで会うことははじめてのことで、二度目の出会いなわけだ。心で会い、身体で会う。
そのプラトニックな付き合い方ともどかしさは、忙しない現代社会への投げかけのように思えた。ゆっくり、友情や愛を育むことって、なんだか素敵――そう思った。

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