散文誌

日記・小説

Sort by 06 2012

Category: スポンサー広告  

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Category: 小説  

sex 添削

 人は見たいものを見て、嫌なものには見向きもしない生き物だ。現実よりも理想を追う
悲しい生き物。自己の欲求に忠実な目で物事を見、ときには絶賛し、ときには酷評する。
 目の前の男も、きっとそんな愚かな生き物の一人なのだろうか。
「ぐふふふ、可愛いなあ、名前は何て言うのぉ?」
 整髪料を付けすぎたのか、テカテカとした七三分けに、度が強すぎるのか豆粒といって
差し支えないほど小さな目は黒縁眼鏡越しに私を見ている。正直、こういった手合いには慣れたつもりでも、時として吐き気を催すことがある。この油染みたオスも、その例外ではなかった。
「うふふ、なんていう名前だと思う?」
 にっこり笑ってそう問いかけてやると、男は待ってましたとばかり、さもうれしそうに口を開く。
「ルイズだね? ああルイズルイズゥ~」
 外国人の名前を、これみよがしに連呼するこの男の醜態ときたらどうだろう。もしも人間博物館があったとしたら、この男は間違いなくそこに入れられるはずだ。日本の恥部という題で飾られた男に、外国人は興味津々で眺めることだろう。そう思うと笑いがこみ上げてきて、ついクスっと笑ってしまった。
「――なんだけど、って、ルイズちゃん、そこは笑うポイントじゃないよぉもう」
 男が突っ込みを入れてきた。どうやら何かを話していたらしいけれど、私は上の空だったらしい。どうせくだらない話だ、耳に入れるのも煩わしい。とっとと終わらせてしまおう。
「あら、ねえ、ここ、こんなに大きくなってるのはなんでかなぁ?」
 そのルイズというキャラクターについてはまったく知らないが、着させられた服からしてセックスアピールの強い女性キャラクターなのだろう。私は十分に媚態を含んだ声で男を誘惑した。
「えっ、こ、ここはね、ほら、その――」
 突然、話の矛先をエッチな方向に持っていったせいか、男はどもりながら答えようとする。その声をさえぎり、私はおもむろに男の恥部へと手を這わせた。
「ほら、こんなに大きくなってる。苦しいんじゃなぁい?」
「く、苦しいよ、ルイズ。でも、まだ――」
 くだらない妄想劇に付き合うのはもうたくさんだ。私は強引に男のズボンを下ろし、パンツ越しにそそり立つ肉棒を掴んだ。
「ほら、こんなに苦しそう。早く楽にしてあげないとね」
 男に微笑みながらそう告げると、私はパンツを下ろし、手で肉棒をこすり始めた。すると男は、いやいやしながらも愛情を求める赤ん坊のように、上半身を煩悶させている。なんて気持ちの悪い光景なんだろう。と、男が何か声にならぬ声をあげると、白いものが私の手から垂れている。どうやらこの男、早漏らしい。最初見たときは嫌な客だと思ったものだが、早漏というのは大きなポイントだ。私は男をランクを、底辺から二、三歩上昇させた。
「うふふ、一杯でたね。ちょっと間って、今ふき取るからね」
 そう言いながら、ベッド脇の小台においてあるウウェットティッシュを取りつつ、男の態度の変化に気づいた。今までの醜態ぶりが嘘のように縮こまり、おずおずとしている様は、まるで母親にしかられるのを怖がっている子供のようだ。
 ささっとふき取り、貝のように自分の殻に閉じこもった男の相手をしているうちに、終了時刻を知らせるコールがなった。時間だ。私はほっと息をつき受話器を手に取る。
「終了5分前です。延長などはありますか」
「いえ。大丈夫です」そういって受話器を置く。男はそそくさと退室準備を済ませて、今にも出て行かんとしていた。この豹変振りは何なのだろう。そんなに居心地が悪いっての?それって失礼じゃない?と一瞬、怒りが湧き起こるのをなんとか押しとどめ、黒服に
今出ます、と告げた。
「もう時間みたい。こんなに早く時間が過ぎるのなんて初めてだったわ。また、来てね」
 そういって男の頬にキスし、そそくさと退室する男を見送る。ああいった手合いはいつも終わった後、まるで私たちが汚いもののように逃げ帰っていく。私たちが汚いのは、世間一般の常識に照らせばそうなるだろうけれど、じゃあそんなきたない女たちに性処理をさせているおまえらはどうなんだ、と私は男に向かって言いたかった。しかし、そんなことを言えば客は取れない。私たちはショーケースの売り物さながら、ただ使われるだけの存在でしかないのだから、心を殺して、客が来れば歓待するしかない。私たちはおもちゃであり、壊れれば捨てられる人形に過ぎない。そんなことを思っていると、次の客の訪ないを告げるコールが鳴り響いた。私は受話器に手を伸ばしながら、次の男はどんな人だろうとぼんやり考えていた。

終わり
スポンサーサイト
Category: 小説  

お題 かくめい

 「やれやれ、僕は革命した」
 スーパーで買っておいたお得寿司セットを、どんぶりに盛り付け、味噌汁をぶっ掛ける。
味もへったくれもない、そもそも汚いじゃないか、なんて言葉が頭に浮かぶが、革命したのだから仕方ない。僕はゴクゴクムシャムシャとどんぶりにかじり付いた。
確かに見栄えは悪いが、この方が早く食べられるし、栄養も変わらないのだ。現代に生きる人間は時間に追われている。かくいう僕もその一人で、今まさに時間に追われているのだ。だから、革命をせざるを得なかった。正直、味のごった煮で美味しくはない。けれど
まずくもない。だけど、猛烈に腹が減っているという妄想で食すと、これが不思議と美味しく感じる。まさに「革命」だ。僕はいま、食につく際の姿勢について、「革命」を起こしたのだ。なんともすがすがしい気分だ。
「やれやれ、僕は革命した」
 友人に誘われた合コンの約束時間まで、あと三十分。いつもどおり準備していたら、
当然間に合わないだろう。だから僕はことさらに遅れることにした。残り物には福がある
ということわざもあることだし、それにヒーローというものは遅れて現れるものだろう。
合コンに遅れる僕というヒーロー。まさに「革命」だ。合コンという、一種の戦場で交わされる新しい戦術。一気に、みなの注目を集めることの出来るこの革命に、どんな名前を
つけようか、僕は迷う。……そうだ、遅刻にちなんで、「mode tarty」というのはどうだ
ろう? これは流行るかもしれないな。流行語大賞に選ばれるかもしれない。なんともすがすがしい気分だ。
「やれやれ、僕は革命した」
 時間を潰すために診始めたアニメが、ことのほかおもしろく、僕は没頭してしまった。
途中、大佳境をむかえんとする場面で、携帯がやかましくガなりたてるので電源をオフに
してしまったため、友人たちは怒っているだろう。なぜこないのか。なぜ連絡もしてこないのかと、いぶかしみ、憤っているはずだ。そして僕はまた革命を起こしたことに気づいた。そもそも友人といっても、二、三度遊んだだけの間柄にしか過ぎず、僕のような凡庸な人間を合コンに呼ぶこと自体、数合わせのためと言っていいだろう。しかも、僕が女性に奥手であることを知っていながらのこの誘いである。裏があるに決まっている。僕を
出しにして笑いでもとるつもりなのだろう。しかしそうは問屋がおろさない。僕が断る
勇気のない人間だとでも想っていたのか、奴らは当然のごとく合コンに誘ってきた。
ふっふふふ、策士策に溺れるとはこのことだな。なぜなら、僕は行かないからだ。
なんという革命だろう。いわゆる、草食系男子という固有名詞が持つイメージを一変させうる事をおこなったのだ。ノーとはっきり言える男、それが草食系男子だと。ああ、
なんという革命だろう。なんともすがすがしい気分だ。明日、彼らの、僕の豹変振りをみて驚くさまをみるのが待ち遠しい。さあ寝よう。連絡もしないで寝る。ふふふ、革命だ。
Category: 小説  

すくみず

 小高い丘の公園からは、眼下に県立足立高校が見渡せる。午後も遅くなった頃、帰宅していく高校生たちを尻目に、僕は丘を登り、高校を一番よく見渡せるベンチに腰掛けた。いつもどおり人影はない。この寂れた公園は格好の覗きスポットで、僕にとっては聖地に等しかった。早速、首に提げた双眼鏡を目にあて、お目当てのプールへと視線を向ける。ピントを合わせているうちに、視界に僕が恋焦がれるあの足が現れた。綺麗な足。細くて、艶やかで、むしゃぶりつきたくなる僕のカモシカ。プールサイドを歩く彼女の足は、いつ見ても、優雅で繊細だった。
 夢中になって見ていると、彼女の姿を遮るように、カバのようにずんぐりとしたコーチが、彼女に何事かを話している。
 腰に手を当て、囲繞高に振舞うさまを診て、ああ、また彼女は何かお小言を貰っているらしいと分かった。あれだけ綺麗な彼女なら、カバのくせに女という、期限切れもいいところの社会的廃棄物が嫉妬を覚えても不思議ではない。などと毒づいていると、彼女が頭を下げ、カバから離れていった。カバは何か言いたげな一瞥を彼女のセナカにくれると、次の獲物でも探そうというのか、彼女のおみ足とは比べものにならない不格好な足で動かし去っていく。
 カバから視線を彼女へ向けると、おりよくストレッチをしていた。いいタイミングだ。
これを逃しては始まらない。何せ普段では見れないような格好をするのだから、僕にとって至福といってもいい時間だ。前屈、屈伸、エトセトラエトセトラ。
 準備運動が終わると、彼女はそのおみ足をスタート台へと向け、ぺたぺたと歩いていく。
台の上に立ち、つと空を見上げたかと想うと、次の瞬間には飛び込んでいた。水面を切り裂く両手に、くねくねと曲がる腰、そして前後に動く僕の足。どんなときも、彼女は美しいと、僕は改めて感嘆した。



 信号が明滅し、赤に変わる。彼女はその前で立ち止まり、携帯を弄っていた。筐体からの光が、彼女の美しい顔を仄かに照らす。薄暗くなった夜道には、彼女以外、信号待ちをする人はいないようだ。僕は思い切って彼女に近づいてみた。といっても、一メートルほど間隔を空けて、だが。僕は気づかれぬよう、横目で彼女を観察する。彼女は携帯を打つのに熱心で、周りのことにはてんで注意が及ばないようだ。しかし、それにしてもなんと美しい足だろう。細く、しなやかなようでいて、瑞々しい肉も併せ持つ、彼女のおみ足には、
何度想ったことかわからないほど、僕は感嘆せざるをえない。あのカバが彼女に嫉妬を抱くのも致し方ないことだと、今では同情をこめて想う。しかし、あの社廃にも若くて綺麗だった頃があるのだろうか。芸能人の今昔を見れば、それも想像に難くはないが――ふと想う。僕のカモシカにもそのような時が訪れるのだろうか?と――。
 いや、それは有り得ない。なぜなら――突然鼻腔を満たした幸せの香りが、僕を白昼夢から呼び覚ました。久しく嗅いでいなかったその甘美な匂いに酔いしれ、全身に幸せが満ち渡っていく。快感。酩酊。ああ、至高の香りとはこのことだろうか?
 軽い酩酊感に陥った僕は、目的を思い出し、しっかりと前方を見据えた。
 思考の海から連れ戻してくれた理想の空気の持ち主は依然として携帯に釘付けのようだ。そっと、あたりを見回す。やはり、僕たち以外誰もいない。僕は気づかれないよう、彼女の後ろに回った。今度は全身をつぶさに観察するためだ。
 肩まで伸びた艶やかな茶髪は緩やかに波打ち、今時の女子高生には珍しく、スカートの丈が長いのには清楚な印象を受ける。その下から覗く美しい足は、まるで音楽が鳴るの
を待っている踊り子のように交差している。その美しく繊細な姿は、まさに美の女神アシの現身のようだ。
 信号が変わり、彼女の足が踊りだす。僕はおろかなカルメンよろしく、距離をとり後を追う。お待ちよ、シルビア。僕の愛を受け取っておくれ――。
 横断歩道を渡りしばらくすると、そこは先ほどまでの賑やかな商店街とは打って変わって、閑静な住宅街だった。
 彼女は、真新しい一軒家へと入っていく。ここか。ここが、そうなのか。
「ただいまー」
 玄関から彼女の声が響く。そのまましばらく待っていると、二階の窓に明かりが付いた。どうやら彼女の部屋はあそこらしい。思いのほか楽に彼女の家を知れたのは良かった。この調子なら、次の計画もうまくいくだろう。彼女を手に入れるための、大事な大事な計画が。既に暗くなった道を、ゆっくりと家路につく。なに、あせることはない。時間はたっぷりとあるのだから。カモシカのような綺麗な足を持った彼女は、もうすぐ僕のものになる。そう、君は僕だけのもの、なんだから――

Category: 日想  

石について 添削

 僕が石に並々ならぬ興味を持ったのは、叔父の影響だった。
「光を受けると、煌びやかに輝く石があるらしい。わしはそれを死ぬまでに見つけるんだ」
夏の午後、叔父の家の庭先でスイカを食べながら、そう語った叔父の目は輝いていた、煌びやかに、美しく。
夏の日の淡い思い出に浸りながら、僕は目の前の石に注意を戻した。その石は、
月光に当てると万華鏡を覗き込んだような錯覚に陥ると言われているが、石に興味の無い凡人にとっては、
ただの石ころ一つに過ぎない。それが僕にはひどく悲しいことのように思える。僕のコレクションを見た人は、
口を揃えてこういうのだ、「綺麗な医師ですね、鑑賞用ですか?」と。しかし、そのお世辞の裏には
(一体何に使うのだろうか、愛好家ならば収集が目的なのであろうが、ただの石に興味が湧く事など、
少なくとも自分にはない。奇特な人だな)という思いが透けて見える。
当たり前のようにあるものにも、それが歩んだ歴史がある、ということに普通の人は気づかない。そのような人間は、リリシズムの欠片もない人間であり、人生に一度は哲学や思いに耽る事があるとしても、石に目を向けることはまずないだろう。
一つの思考に集中するという事は実に面白い事で、ある一つのものを見つめ続けるとゲシュタルトが崩れるのと同じで、思考も、ばらばらに崩れていくのだ。それがなにより気持ち良い。
石を見ていたら、何となくそう言った現象が起こり、考えの世界へと導いてくれる。
それは鑑賞などではなくて、思考を構成する一つで脳の一部の様な物なのかもしれない。
石について関連する事象を思い浮かべれば、どれだけ石は歴史に深く干渉して来たのかが自分の脳内に浮かんでくる。
例えば、公園などに落ちている石はもしかしたら古の投石機から射出された岩の断片かもしれない。
そう考えてみれば、歴史が好きな自分にとっては面白い想像ができる。
それが不思議な形であったり、不思議な模様であったりすれば、尚更に想像は膨らむ。

昔、叔父と犬の散歩が日課だった幼い僕は、叔父の為にと綺麗な石を拾っては渡していたという期間があった。
きっかけは、叔父と叔母が家庭菜園をしていて、その野菜などを漬けるための石が砕けてしまったため、漬物石を拾って叔母にプレゼントとしようと叔父が言い出したのだ。それが案外楽しくて、その習慣は何週も続いた。
叔父の家は近くにあり、当時の自分でも行くに手間取る事などない道程だったので、叔父と犬の散歩に行く回数は多かった。
土日は勿論、平日は学校が終われば叔父の家へと駆け出して散歩に行こうとせがんだ。
母から「叔父に迷惑を掛けてはいけないよ」と言われても、叔父は笑って「健康に良いから全然良いよ、寧ろ毎日来い」などと言ったものだから毎日通った。
その時からだろうか、叔父は石を集めて年月日を書いた紙の上にそれを載せて硝子のケースに入れるコレクションを始めたのだった
今も残っているが、相変わらず綺麗な石ばかりが置かれていて、その中に幾つか自分が拾ったものも混ざっていた事に喜びを覚えたり、懐かしい気持ちになった。
ノスタルジーに誘われるまま、僕は叔父と過ごした日々を、家のあらゆる場所から感じ、思い起こした。僕にとってこkは、ある種の博物館の様な、叔父の歴史が語られる場所であった。
一つ一つに各々の思い出があり、中でも一段と黒く、鈍く輝くつるつるとした石は鮮明に記憶に残っているくらいだ。
逆に考えると石が自分の記憶の様で、その一つ一つに、僕と叔父の思い出が詰まっているとさえ思える。最近はとみにそうで、歴史深い聖遺物に触れているような感覚さえ感じ始めたものだ。
もしかすると石とは、歴史さえを飲み込んだ凝縮体で、細やかな情報を蓄えているのかもしれない。悠久のときの流れに身を任せ、何千年もの間、静かに、ぽつんと横たわる石たちの想いは、僕がこの世を去っても、続いていくのであろう。
Category: 日想  

教訓

今日の教訓

・なるべく難しい言葉は使わない。使うとクドくなり、テンポが悪くなる可能性があるから。
・誤用がおおい。推敲はしているつもりだけど、もっと注意深く一次一次診ることにしよう。
・文章にごてごてと付け足してしまって重くなっている。もっとスマートに書き綴る努力をしよう。
・ネットで小説を見せる場合は、レイアウトに注意すべし。
Category: 小説  

お題「妖精」

 夏の容赦ない日差しが身体をジュウジュウと焼き、肉汁がジュクジュクと溢れ出る。
肌という肌から塩気を帯びた灰汁が流れ、時間が経つとともに鼻をつく刺激臭へと変わっていく。
膝上の少女、加奈子は、人が動物であるということを僕に証明するかのように、汚らわしい臭いを撒きちらしていた。
その臭いに羞恥心を感じ、ふと周りを見渡す。昼下がりの公園には暑さのためか、
木漏れ日のベンチに腰掛けた僕ら以外に人はいないようだった。
「ケンちゃん手がとまってるぅ」
 加奈子はぶすっとした顔を向け、僕を非難する。暑さと臭いのせいか、気づくとあや取りをとっていた
手が止まっていた。ごめん、と言いながら、どこまでとっていたか忘れたあや取りを最初から再度取り組む。
上下左右に指を躍らせていくと、眼下のおかっぱ頭も、指の動きに合わせて小刻みに動いていく。その様はまるで壊れた
人形のようだった。ネジに狂いの生じた小さな人形。動くたびに、身体の隙間から油脂を垂れ流していく汚らしい人形。
「わああ、できたできたぁ、すごい」
手をパシパシと叩きながら、僕の膝上で小躍りする加奈子は、在りし日の姉を――幼い頃の記憶を呼び起こさせた。
何かにつけて僕を褒めてくれた姉はもう居ず、代わりにこの加奈子が生を全うしているという現実。僕の手から姉を
奪った小さな悪魔は、あの日病院で姉の命と引き換えに、この世に産声をあげた。オギャアオギャアと泣き喚く小さな悪魔。
「ケンちゃん、早くつぎ見せてよぉ」
悪魔が媚態を含んだ声音で催促する。そよりとも風の吹かない公園で、小さな悪魔と戯れる僕は、一体何をしているのだろう。
「ねえねえ、はやくぅ」
どことなく姉に似ている顔と声のせいか、奇妙な感覚に陥る。僕が構ってやっているはずなのに、悪魔に使役されているような、
ボタンを掛け違えたかのような違和感。冗談じゃない。誰がこいつなんかのために。仕方なく相手をしているだけだ。僕はこいつの
召使でもなんでもないんだ。汚らわしい臭気を所構わず発散する悪魔に、何故僕が奉仕しなければならないんだ。
そう思うと、無性に腹立たしくなってくる。心の底から、憤怒がこみ上げてくる。おまえが姉を奪った。おまえが姉を殺した。おまえが――
気づくと、僕の手は加奈子の首を絞めていた。細く小さな首に、渾身の力をこめて。
 加奈子は、苦しみから逃れようと僕の手を引っかいては暴れまわる。驚きと恐怖に彩られた顔は引き攣り、額に貼りついた髪から
汗が滴り落ちる。グリーンのオーバーオールの下に着た白いシャツはじっとりと汗ばみ、その下の柔肌が透けて見えそうだった。
ぶるぶると震える加奈子。そうさせている僕。いつまでもこの時間が続けばいいと、狂気に染められた脳裏に浮かんだ。
Category: 日想  

お題「初」

人は誕生から死までの間、初を経験し続けるといっても過言ではないだろう。
細かく定義すれば、一瞬一瞬が初になるのだけれど、そんな記憶の片隅にも
留まらない排泄物のようなモノを書いても面白くない。かといって思い出深い
エピソードばかりつらつら書いても、一体誰が俺の便所の落書きに勝るとも
劣らないしょうもない話を読みたがるのだろうか。
だからといってこのままやめれば思考時間が無駄になるばかりではなく、
文字入力に伴うエネルギーも無駄に消費することになる。
それは霊長類の頂点に、いや食物連鎖の頂点に立つ英知なる人間に生まれた身
としては許しがたき愚行ではないだろうか。
ではどうすれば無駄にすることなく人間としての尊厳を保てるのかというと
面白い事を書くしかないのだがそうなるとまた最初の疑問にぶち当たることになり――以下無限ループ
こんな感じで思い悩んだ事がある人はいると思う。
まあ、何を言いたいのかと言うと、これも一応、初、てこと(´ω`)

Category: 小説  

ワイスレ参加作品

 夕陽を背景に、町の至るところに湯気が立ち、粗野な男たちのドラ声と、遊女たちの嬌声が彩る鄙びた温泉町は、
闇が寄る毎に、活気付いていくようだった。夜の蝶達が振りまく燐粉に、男達は吸い寄せられ、野卑た笑い声を響かせる、
不夜の町。その喧騒を離れた河川敷に、一組の男女が、遊町に不釣合いな雰囲気を醸し出していた。
文壇の貴人と、うら若き女郎である。
 男はいかにも文人肌といった痩せぎすの身体を襤褸のような浴衣で包み、どこか近寄りがたい印象を与える気難しい顔は、
寄り添う女子ではなく、夕焼けに染まる川面へと向けられていた。その男の横顔を見つめる女子は、遊女らしい、
艶やかな浴衣に、まだ幼さの残る姿態を隠し、可愛らしい顔が、朱色に染まっていた。
「また、いらしてくれますか」
 女子のどこか諦感にも似た声は、俯くとともに、先細りに消えていった。
 男は黙したまま。時折吹く風が、夕陽に彩られた水面をさざめかせる幻想的な様子を、ただじっと見つめている。
俯いた女子のお下げがゆれ、うなじに、一涙が浮かび下った。
「もう一目、会いたい。いつでもよろしいのです。いつか、また来ていただけますか」
 女子の祈るような、せつない声音に、男は眉間に皺を寄せ、厳しい顔のまましばし思案に耽っているようであったが、
女子の潤んだ眼差しに観念したのか、コクリと、小さく頷いた。
「嬉しいっ。いつまでも、お待ちしています」
 女子は顔を輝かせながらそう言うと、名残惜しそうに腕を放した。
「約束、ですよ。また、いつか、必ず」
 言い終えると、女子は踵を返し、騒がしい物音のほうへと帰っていく。男は、お下げの揺れる女子の後姿を、目を細め見入っていた。



12345678910111213141516171819202122232425262728293006 < >
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。