散文誌

日記・小説

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Category: 日想  

好きなことなのに才能がない。これほど残酷なことがあるだろうか

 好きなことなのに、才能がない。残酷なことがあるだろうか。

 僕が小説を詠むようになったのは、小学五年の頃だっただろうか。兄が愛読し
ていた
「ロードス島戦記」という架空戦記モノに、兄の影響もあって興味を持った僕は、
手に取ってみた。
 最初は、文字を追うのに必死で、イメージを頭に描くことは難しかった。でも、
文字を追うこと、ストーリーを追うことに夢中になった僕は、いつしか、頭の中
で書かれた場面、人物をイメージできるようになった。
 挿絵の存在が手助けしてくれたのは言うまでもない。正義感に溢れるものの、
すこしばかり猪突猛進というか、冷静さを欠いた主人公パーンは、この物語の主
役であり、またこのロードス島を舞台とする成長譚の主軸である。そんな彼をサ
ポートするのは、幼馴染で優しさに溢れたエド、人を小ばかにしたような態度を
とりつつも、パーンのことを気にかけるエルフのディードリット。他にも様々な登場人
物たちが、ときにパーンを助け、裏切り、物語は進んでいく。
 物語自体は、どこにでもありそうな代物だけれど、初めて触れたファンタジー
小説で、読みやすくもあったロードス島戦記は、幼少期の僕の愛読書となった。
 そして、年を重ねるにつれ、読書のレパートリーも、量も増え、いつしか僕は、
小説を書きたい、と思うようになった。
 本気でプロになりたい、とかそんな本腰を入れた考えではなく、漠然とした夢の
ようなものだった。
それは、自分にできるかどうかわからなかったし、なにより勉強が苦手だった僕が、
小説なんて書けるのか、なんて疑問もあったためだ。
 書こうか書くまいか、迷っていた僕の背中を押したのは、星 新一という、
主にショートショートを書く作家と出会ったときだ。いや、出会う、と書くと
語弊があるな。本屋で見かけ、読んでみた、としよう。そこで僕は、こういう
小説もあるのかと感心するとともに、これなら自分にもできるんじゃないか、
という淡い期待に踊らされ、その日のうちに僕は星 新一氏のショートショート
集を読みきり、早速執筆にとりかかったのである。
 ショートショートとは原稿用紙十枚から三十枚あたりの、短編には及ばない紙
数の小説のことであり、小説を書いたことがない僕には、とても入りやすく、ま
た書きやすいものだと思ったモノだ。なにせ、長編のように長いレトリックで綴
る必要はなく、単純に起承転結を短い話で描けばいいのだ。これなら、誰でも小
説というモノを書けるんじゃないかと思うのも無理はない。しかし、のちに思い
知ることになるのだが、ショートショートというものは、ある意味、長編小説よ
りも難しいといえる代物なのだ。
 起承転結を原稿用紙にすれば十枚から三十枚、文字数にすれば大体、一万から
五万といったところだろうか。その短く狭いスペースに、物語を収めなくてはな
らない。起で物語の枠組みを書き、承で枠の細部を埋め、転で物語を転がし、結で
物語を締めくくる。言葉にすれば簡単だが、実際にやってみるとなると、これが
なかなか難しいものなのだ。
 小さな枠組みのなかで物語を完結しなければならないのだから、長編のように
モノローグから入るなんて無謀もいいとこ、試行錯誤して得た僕のショートショー
トの書き方は、先に落ちを決めることだった。帰納法と呼ばれるこの書き方は、
物語の最後から形作っていくことで、小説を書くときにありがちな物語の齟齬などを
訂正しやすくなる、というモノだ。
 そして書き始めた。最初はただ楽しかった。物語が面白いかどうかではなく、
ただ、文章を書くことが楽しかった。小説を書いているときだけ、自分もいっぱしの
人間になったような気がして、書きなぐった。それが、ただの自己満足だとも知らずに。
 小説とは基本的に、他人に読ませる類のモノだ。一人で書いて一人で読む、そんな
楽しみ方もあるかもしれないけれど、基本は、他人、つまり読者あっての小説なのだ。
僕はそれを完全に失念していた。最初の頃の、ただ楽しくて書いたものは、一般的な
目からも、同じ志を持つ者達からも酷評された。当然だ、僕は読者のことなんて
てんで考えていなかったのだから。
 そのことに気づき、改めて小説を、プロットを見返してみる。プロット、という
より箇条書きに近いプロトタイプにも、その読者の目を忘れたような展開、場面が
山ほど存在した。
 そう、僕には客観視という言葉そのものが抜け落ちていたのだ。だから、僕の書く
小説はどれも独りよがりな展開であり、読者をおきぼりにするような落ちだったりする。
 そのことに気づいたとき、僕は自分の馬鹿さ加減にあきれるとともに、やばり僕には
クリエイティブなこと、創作は向いていないんじゃないかと思うようになった。
 そして僕は、筆を折ることにした。つまり逃げたのだ。批判がコワくて、戦う
まえから尻尾を巻いて逃げ出したのだ。それは僕の人生においても言える事だった。
僕はこれまで、本気で何かに取り組んだことがあっただろうか。いつも楽なほう、
楽なほうへと流されて生きてきたのではないのか。そんな自分だから、この小説の
壁にぶち当たったときも、戦うまえに逃げ出してしまうのだ。
 そして気づくのだ、僕には何もないと。人に誇れることも、人にムネを張れることもない
自分の価値のなさに。
 だけど、それも僕のようなクズにとっては、一過性の気分の落ち込みように過ぎない。
落ち込んでいた次の瞬間には、僕はこれでいいんだと開き直るのだから、自分で
自分に呆れる。でも、下手でも、僕は文章を書く事は好きだ。それが理由に、
ブログを、ツイッターを、主要なSNSには登録しているのだ。
さて、ここまで書いてきて、何を言いたかったのか忘れてしまった。タイトルは、
好きなことなのに、才能がない。これほど残酷なことがあるだろうか。というものだったな、
そういえば。これは平たく言えば、下手の横好きが未練がましく自己の不甲斐なさを
哀れんでいる、ただの自己憐憫に過ぎない。そう、僕は小説に恋をしているけれども、
それは決して実ることのない片思いなのだ。そう諦観めいたことでも書いて、今日は
終わりしようよそうしよう。
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Category: 日想  

オーマイガー……なんてことだ

CCleanerで掃除したところ、なんとテンホウのIDデータが消えた件について(´;ω;`)

僕の二ヶ月に及ぶ戦績がパァっ>< 最悪なんですけどー(´;ω;`)

112.jpg

Category: 日想  

初段到達っ!

やっと初段に上がりますた(^ω^)v

というわけで記念カキコ


tennhoy2.jpg

Category: 日想  

最近麻雀を始めた

麻雀をはじめて二ヶ月程が経った。最初は、ただ打つだけでおもしろかった。
ばらばらに配られる牌を、自分なりの考えで整理し、役をつけ、リーチする。
ちょっとした頭の体操みたいで、凝り固まった僕の頭にはいい刺激になると思った。

しかし、最近は欲が出てきた。勝ちたい。上がりたい。勝率を気にするように
なってから、急にストレスを感じるようになった。ただ楽しんで打っていたときは
感じなかったストレスが、勝率などを気にするようになってから、ちくちくとストレス
という名の棘がささっていく。これではダメだ。遊びにストレスを感じるなんて、
本末転倒な気がする。だから、極力、勝率などを気にせず、楽しんで打とうと思う、今日この頃。tennyou.jpg

Category: 日想  

ニートについて

世の人々はニートのことを下に見ている。ある者は同情し、ある者は罵倒する。
感傷するのは勝手だが、僕らニートがいつ貴様ら社畜の風下に立ったというのだ。
勘違いするな。ニートだから暇だ、ニートだkら体力がない等と自虐する分には一向に構わない。
だが、貴様ら社畜ごときが、間違った解釈で僕らを下に見るのだけは我慢がならない。

そもそもニートとはその境遇にある者をあげつらう言葉ではない。自尊の言葉なのである。
我々は働かずして、人生における意義を見出した、いわばニュータイプであって、
未だに労働という対価に囚われるオールドタイプの嘲りなぞ、嫉妬の裏返しにしか見えないのだ。

社畜共が無様にも労働に汗を流し、社会を成り立たせ、僕らはニーとは優雅に自宅を警備する。
それがニートにとっての世の中の仕組みだ。理だ。条理なのだ。僕らニートは言ってみれば、
選ばれた特権階級なのである。いわば貴族だ。その貴族に対して、ただの民草である社畜ごときに
下に見られる謂れは無い。

ニート。それは儚く美しい。
Category: 日想  

現在の体育教育について

聞くところによると最近の学校での体育祭は順位をつけないらしい。
競わないでなにが体育際だ。買った負けた、その感情が競争社会に
出るだろう子供たちのメンタルによくも悪くも多大な影響を与える
モノだ。それは大人になって、きっと役に立つバックボーンとなるであろう。。


なのに、現行の学校教育というモノは、順位をつけないのだという。
自分の理想を叶えたければ相手を蹴落としていかなければならないというのに、
なぜ教えないのか。これでは、日本人という民族は弱くなる一方ではないか。
日和見主義のわが日本国の未来は暗い。

ああ、貴族に生まれたかった……

Category: 日想  

「普通」とは

普段、意識せず使っている言葉の中でも、特に多いのが「~普通においしい」とか、「普通におもしろい」という表現だろう。

普通においしい、とはどういうことか。

舌がとろける様なとか、そういう過剰な修飾語を用いたような「ものすごく美味しい」という意味ではなく、
期待していたよりも美味しくはなかったけれど、十分満足に値する料理だった、ということだろう。

ということは、「普通におもしろい」も、とてもおもしろい、というわけではないけれど、十分満足に値するモノだった、
ということになる。
つまり、ここでいう「普通」とは、特別ではない普通、以下、

まあまあ ・ ほどほど ・ (どこといって)特徴のない ・ 中肉中背(の男) ・ 普及(品) ・ そこそこの(企業) ・
スタンダードな ・ 変哲もない ・ ・ 何でもない(球を逃す) ・ 適当に(やっておく)

という意味合いであることが分かる。普段、何気なく使う言葉の数々には、ほんの少しのニュアンスの違いで、誤解を招く恐れがある。

言葉は生き物といわれるように、時代毎に捨てられ、または別の解釈に変えられる言葉は意外と多いのだ。

その点について、わたしたちは十分に注意して発言すべきであろう。

Category: 小説  

お題「チーズ」

 星を見るとチーズを思い浮かべる。空というパンに散りばめられたチーズの星々。暗い路地に身を潜め、
待ち人のわたしは、チーズについて思いを馳せた。誰もが耳にした事のあるこの発酵食品は、様々な製造方法により、
そのバリエーションは多岐にわたる。健康食品としてのチーズであったり、料理のスパイスとしてのチーズであったり、
ひとえにチーズといっても、奥が深い代物なのだ。
 加工ひとつで味もカタチも変わる、千の顔をもつチーズは、わたしにとって最高の食材であり、嗜好品であった。
チーズを食べ続けるうちに、わたしの中である一つの欲、希望が浮かび上がるのは当然である。もっと美味しい
チーズが欲しい、もっと奇抜なチーズが欲しい、と。
 そしてわたしはその奇抜で美味だと噂の、あるチーズの製造方法を手に入れることに成功した。それはとても
難しく、また、いまの地位、身分を守るためには、罪を犯さざるをえない方法でしか手に入れられないものだったが、
そんなものはチーズに魅入られたわたしにとって、路傍の石のように些細な問題であった。要は見つかりさえしなければよいのだ。
露見すればつかまり、法で裁かれるだろう。しかし、それは捕まった場合の話であって、捕まらない確信があるのなら、
罪を犯すことに躊躇などしないとわたしは考えている。人類みな兄弟とは建前であって、そんなことを本気で信じている
輩などいやしないだろう。法に穴があり、どうしても欲しいものがあるのなら、わたしは犯罪を犯すことをためらわない。たとえそれが、凶悪なことであろうとも。

 チーズに出会い、その味の虜となったのはいつ頃だったろうか。元々わたしは、チーズなどの醗酵食品が
嫌いであった。それは、子供の頃に食べさせられ、以後目にするのも嫌なあの納豆といわれる腐れ豆のせいであった。
グロテスクに変色した大豆と、あの独特な臭いは、いい歳になった今でも、見るのも嫌な代物である。
だから、わたしがチーズを始めてみたとき、納豆と似た製造方法と、その独特な臭いから、これはダメだと、
食わず嫌いで過ごしてきたのだが――ああ、あれはいつ頃だったろうか。確か中学のころだと思うが、そう、
あの年代にはよくある誰かをちゃかしてはその様をみて笑う、といった行為に、しばしば夢中になるものである。
かく言うわたしもその一人で、友人の苦手なものを見つけては、度々目の前にかざしたりしてその嫌がる様を
楽しんだものであった。そしてわたしも度々いやがらせに晒されたのだが、そのときの一つに、チーズがあったのだ。
ぼやけた記憶を手繰るに、そのときわたしはある賭けに負け、罰として指定されたものを否が応でもやらなければ
ならない立場に立たされていた。そして出てきたのが、コッペパンにサイコロチーズをまばらにまぶしたもので、
それはその日の給食のパンだった。友人は目ざとく、わたしがパンを残したのを訝り、看過したのであろう、
わたしがチーズを苦手であることを。そしてパンをわたしの目の前にかざしたことにより、その疑いは明白なものとなった。
いやはや、そのときのわたしはなかばパニックに陥っていたと思う。
なにせ、わたしはチーズを食ったことがなく、もし、あの見るのも嫌な納豆と同じような代物だったとしたら、
などと考えると、その危惧はわたしの脳を侵食し、逃げろ逃げろと周波を送ってはわたしを参らせたモノだ。
しかし、あのころのわたし、いや、あの年代の少年となると、くだらない、ちっぽけなことでも、生き死にの
場面、とった具合に自尊心の塊であるから、当然わたしもその自尊心を守るべく、チーズを恐る恐る食してみたのだった。
パンを口に含み、友人たちがにやにやと見守る中で、わたしは実におかしなことに、呆けた顔をしていたように思う。
食わず嫌いで通してきたチーズは思いのほか、いや、しびれるような美味しさだったのだから、それも当然である。
 それからのわたしはチーズのとりことなり、チーズを追い求める人生を送ってきた。ナチュラルチーズだけでも
十を超える種類があり、その他におよべば、膨大といっても過言ではない種類にのぼる。
チーズ。それは好きではない人間にとってはただの食品の一つでしかないだろう。だが、わたしにとっては、
人生を彩るために必要な主役であり、花形なのだ。

 回想の終わりを知らせるように、コツコツとヒールの音を響かせて、この薄暗い路地へと入ってくる者がいた。
エモノだ。わたしのチーズを新たな境地へと導いてくれる素材が、わたしのほうへと向かってくる。不思議と緊張は
しなかった。ヒールの規則正しい足音は、エモノもまた、緊張とは無縁だと知らしめてくれる。それも当然だ。
この路地はエモノが毎日帰宅路に使う道であり、それはもういうならば勝手知ったる我が家のようなものだろう。
しかし、今日は違う。エモノは、自販機の陰に隠れたわたしに気づいてはいない。わたしは黒い服で身を包んでおり、
自販機の光の影に潜んでいる。そんなとき、人は影に注意を向けはしない。光が影を蔽い隠し、エモノの目を欺くだろう。
そして、背後から近づくわたしに気づかず、くもの巣にかかったエモノは捕食される運命なのだ。この世は弱肉強食であり、
弱きものは搾取されて当然なのである。それが、自然の摂理なのだ。
 コツコツと、ヒールの足音が徐々に近づいてくる。一歩、また一歩と。エモノがわたしの前を過ぎた瞬間、
わたしは陰から身を翻し、エモノに向けて手を振りかざした――。

 我が家の地下室はわたしの愛しいチーズを練成する場と化している。ここは色々なチーズを、様々な方法で実験し食すわたしの
憩いの場だ。そこへ、首尾よく捕らえたエモノを連れ込み、あらかじめ用意しておいたベッドに紐で括りつける。わたしよりも
大柄なエモノを運び入れるのには苦労したが、まあしかたのないことだ。わたしの条件に合う女性は、エモノである彼女以外
見当たらなかったのだがら。
 わたしが鈍器で殴った頭からはまだ血がこびりついていたが、もう出血はしておらず、血は凝固したようだ。
エモノにはしばらく生きていてもらわなければならない。ここまで順調に計画は進んでいる。あとは、エモノから
目的のモノ――母乳を捻り出し、それを醗酵させてチーズを作るのだ。そう考えると、にわかにわたしのボルテージは
上昇し、今にもエレクトしそうであったが、ここは我慢せねばならない。早まり、事をしくじってはこれまでの苦労が水の泡なのだから。
 わたしは高揚した気分を落ち着かせるため、今宵は寝ることとし、明朝、作業に取りかかる事にした。と、その前に、
エモノに猿ぐつわを噛ませることを忘れてはならない。寝ている間にぎゃあぎゃあと騒がれて事が露見する、なんて
馬鹿げた失敗はしないように、わたしはエモノの口にしっかと猿ぐつわをかませ、地下室をあとにした。

 明朝。目覚めたわたしを待っていたのは、えもいわれぬ高揚感であった。それは子供の頃、遠足に心をわくわくさせていた
童心のような、うきうきと心躍る感覚だった。わたしは朝食もそこそこに、いそいそとエモノのいる地下室へと足を向けた。
 地下室には窓がないため、電灯をつけなければ昼でも漆黒の闇に閉ざされている。わたしは電灯をつけたとき、エモノが
どういった反応を示すのか、内心興味津々であったが、残念なことにエモノはまだ夢の中のようだ。反応はなく、昨日と同じく、
ベッドにくくりつけられたエモノは意識を失っているように見える。いや、まさか死んでいるのではないのか……? 
不安に駆られたわたしは、急いでエモノの傍へと駆け寄り、脈を計ろうとした、そのとき――エモノが猛然と暴れ、なぜか
自由になっている片足をわたしに向かって蹴りだしてきた。
 エモノは女性にしては大柄で、小柄なわたしよりも身長があった。わたしよりも体積の多い身体から繰り出されたケリは、
見事にわたしの横腹を打ち、わたしを悶絶とさせた。痛みに呻くわたしを尻目に、エモノは括りつけていたはずの手足の紐を
手に、わたしの首へとその魔手を伸ばそうとする。わたしはパニックと痛みによって正常な思考はどこへやら、ただただ逃げる
ことだけしかできなかった。そこへ追い討ちをかけるような一蹴りが繰り出され、わたしのあバラを砕いたかと思うような、強烈な
リバーへの衝撃は、わたしの動きを止めるのに十分な威力だった。
 エモノはその隙を逃さず、わたしの首に紐をかけ、きりきりと締め上げてくる。わたしは死に物狂いで紐をはずそうと、エモノの
苛烈な行為を止めようともがくのだが、わたしよりも大きいエモノはわたしの反攻を凌ぎ、さらに首への圧力を加えてくる。
ここで、わたしは死ぬのか。ここで、こんなところで、わたしは――。

 目覚めたわたしを待っていたのは白い壁に白いベッド、それらを囲むように白いカーテンであった。
消毒の臭いに満たされたそこは、病院であった。白。白。白。病院とはなぜこんなにも白一色なのか、などと考えていると、
わたしを見に来たのであろう看護婦がわたしの起床を知ると、そそくさとどこかへ去り、いくばくも立たぬうちに
グレーのスーツに身を包んだいかにも刑事でござん、といった風情の中年の男がわたしの前へと来るなり、身元確認を
おこなった。いわく、わたしの名は、わたしの名前で間違いがないか。いわく、わたしの家は、わたしの住所で間違いがないか。
そして、女性を拉致監禁したことに間違いがないか。わたしはその刑事の質問に一切答える気はなく、ただ弁護士を呼んでください、
と繰り返すだけであった。

 そしていま、わたしはいわゆる豚小屋と呼ばれる留置所にいる。私選弁護士の言い分では、わたしの有罪はほぼ間違いないそうだ。
裁判までの日々を、わたしはここで過ごしている。わたしのあとにここへ厄介になってきた中年の親父は、チンケなスリ泥棒の
ようだったが、わたしの暇を潰すいい道具である彼に、わたしはその醗酵したかのような口臭から、ジョゼとあだ名をつけ、
折ある毎にジョゼと豚小屋で話に花を咲かせていた。

「――とまあ、わたしの顛末はこの通りだ。万全に思えた計画でも、穴はあるものだなと今更ながらに気づかされたよ」
「ふーん、どぢ踏んじまったなあお宅。あのときこうしていれば、なんて後の祭りだけどさ、あんたの話を聞く限り
ほんと、いまひとつのところでぽしゃったのは惜しいことだよなあ」
「そうだな、運命にもしもはないけれど、思いを馳せることをとめることはできないな。無駄だと知りつつも、あのとき
こうしていればと、悔やまない日はないよ」
「まあそうだろうなあ。わしもよくあるからわかるけど、あんまり考えないほうがいいぜ、精神衛生上、な。ところで、
なんであんたはわしをジョゼと呼ぶんだ?」
「……君はナポレオンを知っているかい?」
「なんだそれ、スパゲッティの話か?」
「ふふ、いや、違うよ。でも、知らないならそのほうがいいこともあるけれど……まあ、君はこの豚小屋で唯一の話し相手だし、
教えてあげてもいいかな。そもそもジョゼというのはね、ナポレオンの――」



Category: 小説  

お題「玉手箱、ポスト

 僕の家から五分ほど歩いたところにある、公園の一角には、もう使われていないポストが
ある。赤い塗装は所々剥げ、むき出しの鉄を晒したそのポストには、ある噂があった。
 事の始まりは僕の友人であるAのふとした呟きからであった。
「公園のポストに、夜な夜な近づいては何かをしている怪しい人がいる」
 Aの家は公園の真向かいで、二階にあるAの部屋からは公園が見渡せる。当然、ポストも
視界に収まる、といった構図だ。かぐる日、Aは受験勉強もひと段落ついたところで、ブレイク
タイムとしゃれ込み、コーヒーを飲もうと思い立ったそうだ。階下のリビングにいき、
コーヒーメイカーから香り立つ濃厚なブラックコーヒーを入れ、自室に戻ったAは、窓辺に
よりそい、空を眺めていた、という。そして、Aは見てしまった。公園の一角、物置小屋の
横にぽつんと置かれた古びたポストに、誰かが近寄り、なにやら怪しげな動きをしているところを。
一体、何をしているのだろうと興味を引かれたAは、その怪しげな人物に気づかれぬよう、
カーテンの陰から目を覗かせ、窺っていた。最初は、ただの酔っ払いだとAは思ったようだ。
なにせ、身体がゆらゆらと揺れ、足元が定まらない様子だったそうだから。そうしてしばらく
覗いていると、その怪人物はポストを開け、中から何かを取り出した、という。
 Aからはその取り出したモノがどういった代物か、ようと判別できなかった。ただ、それが
どうやら箱のようなものだと分かったのは、怪人物がその物体の上部を上に上げるような動作を
したからだった。そこからは、夢や幻、といった類の胡散臭い話になるかもしれない。
なにせ、Aが見たのは、その箱のようなものから黒い煙が立ち上り、怪人物を包んだと思った
瞬間、その怪人物が消えうせた、というのだから、おかしな話である。
しかし、長年の友人であるAが、そのようなくだらない嘘をつくとも思えず、僕は半信半疑ながら、
Aの話を笑い飛ばした。
 それからしばらくしてからの、学校からの帰り道、いつも僕はその公園の前を通る
(Aといつも一緒に帰っているのだから当たり前の話)のだが、その際、ちょっと寄って調べてみようと、
Aとともに公園の中へと足を踏み入れた。
 この公園は、公園といっても小さなもので、砂場と滑り台がちょこんと申し訳なさそうにあるだけで、
あとは直径10メートルもない広場があるだけだ。その広場の隅に物置小屋があり、さらにその横隅に、
例のポストがある、といった感じである。
 ポストの前に立ってみて、僕はこのポストのささくれぐあいに少し嫌なものを感じた。
それはAの話を聞いたせいかもしれない。だけど、どこかそのポストには、なにか得体の知れない存在感の
ようなものを、見るものに感じさせるような不気味さがあった。
赤い塗装が所々はげ、むき出しの鉄を晒したそのポストは、一見、なんの変哲もない、もう用済みのポスト
のように思えたが、ポストの中央にある、管轄地域を示す欄には、こう書かれていた。

『○○町~桃源郷行き』

 ○○町とは、言うまでもなく僕らが住む町の名前だ。しかし、桃源郷とはなんなのだろうか。
そのような地名が実際にあるとは思えないし、また、僕らが知り得るかぎりの地名を思い返してみても、
桃源郷なんて地名はなかったはずだ。じゃあこれは一体なんなのか。よく見てみると、桃源郷行き、と
書かれた文字は比較的最近書かれた様子で、まだ風雨に晒された文字によくある、ささくれた部分は見当たらなかった。
だとすると、これは誰かが上から書き直したのだろう。でも、一体何のために? あるはずのない場所を
示すことに、何の意味があるのだろう。普通なら、ただのいたずらで済ますようなことだ。
しかし、いたずらにしてはどこか引っかかるものを感じた。それは、Aから聞いた話のせいかもしれないし、
そのポストが放つ存在感のせいかもしれなかった。とにかく、僕はそのいくぶん真新しい文字に、違和感を感じたのだ。
それはAも同じだったようで、しきりに首をひねっている。とにかく中を調べてみようと、
Aが言ったので、僕はポストの裏側に回り、中を開けようとした――のだが、しっかりと錠が締まっているようで、
取っ手のレバーはびくともしなかった。
これではどうしようもない。僕はもう半ば興味をなくし、Aに帰ろう――そう告げようとした矢先、Aが突拍子もないことを
言い出した。
「……手紙、出してみようかな」
「はあ?」と、僕はAの行為に呆れたものの、Aの顔には真剣な表情があり、ちゃかせない空気を感じた僕は半ばやけくそでこう言った。
「なら、出してみれば? 時間の無駄だとおもうけどね」
 僕の言葉に、Aは軽くうなずくと、そうしてみる、といいざま、足早に公園の向かいの自宅へと歩き去っていった。
僕はAの様子に呆れるとともに、Aが見せた真剣な表情が物語る、使われないポストに手紙を出すという行為に、
どんな意味があるのか、不思議に思うだけであった。

 明朝、Aは挨拶もそこそこに、手紙を出したことを僕に告げた。その顔はどこか期待を思わせるわくわく感があり、
僕はまた妙な気持ちになった。手紙が届くというあてでもあるのかと、Aに聞いてはみたが、Aは思わせぶりな顔を
におわすだけで、何も言わなかった。その秘密主義に、僕は軽い苛立ちを覚え、それからはあのポストがらみのことは、
自分からは一切口に出すまい、と決意した。

 平凡な日常、繰り返されるかのような反復行動。あれから僕の日々にはこれといって目立つような出来事はなく、
Aともあのポストの話をしないだけで、いつもと変わらぬ日々を過ごしていた、そんな矢先の出来事だった。
Aが失踪したのは。
 Aが消えた――そのこと自体は、最初はただの親子喧嘩の末の逃避行だろうと高をくくっていたが、それが一週間、
二週間と続くうちに、ただならぬことが起きたのだと、僕にもようやく実感できた。
 まず頭に浮かんだのは、あのポストのことだった。Aは手紙を出し続けていたのだろうか? そのことを
調べようと、A宅におじゃまし、Aの部屋を見させてもらう機会を得た。
 Aの几帳面な性格が表れたような、とてもかたずいた綺麗な部屋は、その主人がいないことを嘆いているのだろうか、
どこか侘しさを感じさせた。その感覚に僕はどこか嫌な気持ちになり、それを吹き飛ばすように、
整理整頓された机をかき回し、探した。しかし、ない。どこにも、手紙のようなものはなかった。
だが、考えれば当然のことだった。Aがあのポストに手紙を出したといっても、それが届くとか、ましてや返信が
返ってくるなど、あり得ぬことなのだから。じゃあ、Aはなぜ、どうして失踪なんてしたのだろう? 
 帰り際、Aの母親にAの近況を聞いてみたところ、なにか問題があったとか、そういう風なことはなく、
いつもどおりのAだった、という。しかし、なにやら毎月のように送られてくる手紙のことを、私たちに見せる
ことのないよう、ひどく警戒しているようだった、と話してくれた。
 帰り道、僕は不気味な懸念を押し殺すことが出来なかった。あのポスト――Aが手紙を出したあのポストからの
返信の手紙が、Aに届いていたのだろうか? しかし、Aの部屋にはそのような類のものは見当たらなかった。
Aが届く毎に始末していたのだろうか? あのポスト……とにかく、Aの失踪には、あのポストが関わっていると、
僕はあたりをつけた。そしてその日から、僕の情報収集が始まった。下は幼稚園児から、上はおじいちゃんおばあちゃんまで、
あの公園によく出入りしていると思われる人々に、僕はそれとなく聞いて回った。あのポストのことを。
 それによると、あのポストがいつからあったのか、誰も知らず、気づけばそこにあったのだという。
たしかに、知らぬ間に気付けばそこにあった、といったようなことは、往々にしてよくあることだとは思う。
例えば、通学路の大通りには、いつの間にかこじゃれたカフェが出来ていたし、クラスメイトのだれそれが
だれそれと付き合った、破局した、というようなことは、普段目にしていないだけで、注意を向ければあることに
気づくものなのだ。ポストも、その類なのかもしれない。しかし――。

 僕はいま、あのポストの前にたっている。辺りはすでに暗闇に包まれていて、公園のちっぽけな街灯では
公園全体を照らすなんてことは不可能だった。薄暗い公園の済みに置かれた赤茶け、錆びれたポスト。
僕はいまそこに、手紙を投函しようとしている。考えれば馬鹿な話だ。使われていないポストに手紙を投函するなど。
しかし、僕は試してみたかった。いや、試さざるを得なかった。Aはなぜ消えたのか、Aはなぜ手紙を投函したのか。
その答えが、手紙を投函することによって明かされるんじゃないか、そんな期待があったからだ。
人っ子一人いない、薄暗い公園の隅にたつポストと僕。これから起こることに、半ば期待と恐れを抱きながら、
僕は手紙をポストに投函した。そして僕は、決して踏み入ってはいけない世界へと、足を踏み入れてしまったのだった。



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