散文誌

日記・小説

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Category: 日想  

うんこ

うんこ。そう聞いて思い出す事柄が一つあった。
タカノリ・メイクス・レボリューション(貴教が革命を起こすとか意味を考えると笑える)こと、
T.M.Revolutionのボーカルであり芸人でもある西川貴教の番組、確かラジオだったと思うが、そこで
リスナーから、

「西川さんは最悪の場合、うんこ食えますか」

なる投書があったのを覚えている。僕はそのとき、大いにその突拍子のないフレーズがツボにハマり
大笑いした事があったのでよく記憶に残っていたのだ。「食えねーよ」と一人突っ込みを入れていた
当時の自分をまざまざと思い出し、クスリと笑みをこぼしたのもつかの間、はて僕はこの問いかけに
対して、どう答えるべきかと考えてみる。

普通ならうんこなんて食えない。特殊な性癖を持つ輩は地にひざまずき恭しく、そしてありがく頂く
のだろうが、そんな極度に頭の振れた人間でない僕は、うんこなんて到底食えやしないと思うのだが、
はたしてそうだろうか。普通の状況なら「食べる」なんて選択肢は存在しない。でも、最悪の場合、
僕はもしかしたら食べてしまうかもしれない、とも思われる。

最悪の場合とはどんな状況か、考えてみよう。極限の飢餓、何かを食べなければ死ぬといった場面だ
ろうか。背に腹はかえられない、逼迫した状況。だが、そんな状態でうんこなんて出るのか? とも
思う。何故なら、人間は水さえあれば、一月は絶食していても持つと言われているではないか。一月
もの長い間、絶食していれば、出るものも出ないんじゃなかろうか? つまり、腸内に蓄えられたう
んこなんてもう、出し尽したあとなのでは? と僕は思うのだ。

どのくらい絶食したら、うんこは出なくなるのか? ググッてみたところ、大体一週間ほどで、宿便
と呼ばれる腸内に留まったうんこの残滓が出始め、それ以降は、飢餓便と言われる粘液下痢便、言い
換えればうんこ色の水が出るのだそうです。つまるところ、絶食していても水分さえとっていれば、
うんこは出るには出るらしい。しかし飢餓便にまで至ると、それはもう食うと言うよりは飲むと言っ
たほうが適切のような気がする。食べるという表現に当たるのはまがりなりにもうんこの形をとった
宿便までだろう。そうすると一週間ほどの断食で僕はうんこを食べざるをえないような状況に至るの
か? そうは思えない。水分をとって空腹を紛らわそうとするんじゃなかろうか。

では、水分を摂らなかったらどうだろう。人間は水を摂らなければ三日ほどで死に至るらしい。喉の
飢餓。小便は出ないけど大便は出るとする。その渇きを満たすため、僕はうんこから水分を摂取しよ
うとするだろうか? ……例え口に入れたとしても、吐き出してしまいそうな気がする。

そもそも、極限の状態でうんこを食べて生き延びた、もしくは食べてしまったというような人間はい
るんだろうか。調べてみても、噂はあれど、真実味を帯びた話はどうも見当たらない。ふと時計を見
やると四時ですよ。これ、学生の辛いところね、なんてコピペが浮かんで消える。

ここまでくだらないことをグダグダと考えてしまった。なんだろう、すごく時間を無駄に空費したと
後悔の念に囚われる。でも一つ面白かったのは、南極物語で生き延びたタロとジロが、一年もの間生
き長らえたのは、アザラシのウンコを食べていたという話。アザラシの糞には未消化の小エビや稚魚
が含まれており、栄養は豊富だったらしいよ。

ああ、そうそう、結論を言うのを忘れていた。最悪の場合、僕はうんこを食べるのか否か?

答えは、イエスでもあり、ノーでもある。
つまるところ、どんな想像も思慮も、その状況に置かれえないかぎり、真実とは遠い隔たりがあるモ
ノだと思うんだ。百聞は一見にしかず、論より証拠、といったところだろうか。これにて終わり。
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Category: 日想  

g560 win7 sp1 アップデート

NTTのセキュリティーツールからアップデートのお知らせがあり、さてはてやるかとダウン開始し
たのはいいものの、なんとSP1に我が愛しのPCちゃんが適用していないため、アップデート出来
ないと来たもんだ。このダイアログを見たとき、思った。来たかと。とうとう来たかと。SP1にす
るときが。これまで先延ばしにしてきためんどくさい代物を入れるときが、とうとう。対面したくは
なかった対決のときが訪れ、決して上げたくはなかった思い腰をよっこらせとあげ、やれやれ、僕は
覚悟を決めた。

僕が使っているPCはレノボのG560という機種名なんだが、実は今までWIN7のSP1にアッ
プデートしていなかった。それは何故かというと、レノボが提供しているG560用のグラフィック
ドライバーが、SP1が出る前の2010年のモノであり、尚且つそのバージョンが、SP1には適
用できない既知の問題を抱えていたため、これまでWINDOWSアップデートを自動更新していても、ビ
ルゲイツからお断りされてきた訳でして。手動で入れる手もあるけれど、それはちょっと怖い。何し
ろドライバーがお断りされているわけで、クソ長いであろうアップデートに失敗したら嫌だし、仮に
成功したとして、その問題を抱えているとされるドライバーが何かをやらかすのも怖い。だから、レ
ノボがG560用のグラフィックドライバーを更新してくれるまで、待っていようと思っていたのだ
けれど、これが一向に来ないんですよ奥さん。忘れ去られたG560ちゃん。薄利多売方式で次々に
新しい商品を売りつけるレノボというメーカーにサポートを期待するのもおかしな話かもしれない。

というわけで、これはもうインテル入ってる?から直接入れるしかないなぁと思い至ったわけです。
早速、インテルダウンロードセンターなるサイトへ行くと、なんと自動でどのドライバーの更新が必
要か判別してくれると言うじゃありませんか。さすが世界の大企業インテル、初心者に易しいなぁと
思ったのもつかの間、結果は『メーカーが弄ってるドライバは、メーカーから最新のドライバを更新
してください』との文字が。いやちょっと待ってくださいよインテルさん。そんなことは分かってい
ます、けれどレノボが対応してくれないので、直接貴下のドライバーが欲しいんですよと憤慨しつつ、
あれ、これなんか前にも同じようなことで意気を削がれたような記憶があったようななかったような、
デジャブに囚われ――ああ、そう、そうでした思い出しました。SP1が出た当時、何故ぼくのPC
はウィンドウズアップデートを自動更新しているのにSP1にならない、もしくはその選択肢が出な
いのかと訝り、ググッたところ、上記のドライバが問題の原因だと突き止め、今さっきのようにイン
テルから直でドライバを手に入れようとした事を。

同じ失敗を繰り返すのはしょうがない 人間だもの みつを

初回、ダウンできない壁にぶつかった当時の僕はめんどくさくなり放置していたんだけれど、今回は
そうもいかない。セキュリティーツールのアップデートにはSP1がなんとしても必要なのです。それに、SP1未満のWIN7サポートが、2014年冬頃に終わると、2chのどこかで見た覚えが
ありました。これはもう先延ばしには出来ない問題なのです。喫緊の案件なのです。踵を返しそうに
なる意気をなんとか押しとどめ、僕はこの重大なる課題をどうにか解決へと導かねばならない。

さてそんなわけで、僕はネットの広い海からモーゼを探し出すべく、闇雲に海の中をもがいてはあが
き、投げ出したくなる心を押さえ、なんとかこうにか、解答を得ることに成功しました。


【1.グラフィックドライバの入手方法】

一口にグラフィックドライバと言っても、使っているCPUなりGPUで、その種類はけっこうな数
にのぼるわけです。僕は該当するドライバがどれなのかよくわかりませんでした。同じ機種を使って
いる同士を探し出し、ようやく、該当するであろうドライバ名を探り当てました。

『Windows 7* 64 および Windows Vista* 64 用インテルR グラフィックス・メディア・アクセラレーター・ドライバー』

上記の文字列で検索あをかければ、ダウン先に行き着きます。
こちらのサイトが簡潔にして明瞭でしたので、リンクを貼っておきます。Lenovoのビデオドライバ更新


【2.SP1にアップデートする前に必要な更新プログラムの入手】

これはマイクロソフト社のホームからSP1に関するページを見ればすぐにわかります。Windows Update を使用して更新プログラムを確認すると、Windows 7 SP1 をダウンロードするオプションが提示されない

更新プログラム 「2454826、2534366、2533552」を入れないと、インスコしてもエラーを吐く場合が
あるとのことなので、自分のPCにこのプログラムが入っているか確認しましょう。無かったら入れ
ておきましょう。


さて、準備が整いました。これでSP1にアップデート出来ます。コントロールパネルからのウィン
ドウズアップデートに、SP1に関する更新プログラムがズラッと並んでいるはずです。あとはイン
スコするだけ。全ての作業が終わるまでに、二時間ほどかかりましたが、今のところ問題はありませ
ん。無事、セキュリティーツールのアップデートも完了。いつの間にかIE9がIE11になってい
てビックリしましたが、外観も触りもほとんど変わりなく、ちょっと以前より重いような気がしなく
もない感じはありますが、まぁいずれ慣れるでしょう。とにかく疲れました。たかが更新、されど更
新、といったところですかね。ふぅ~。
Category: 日想  

開催日、五月四日ということになっているけど、本当にその日でいいのだろうか。黄金週間って旅行
いったりなんやりして忙しそうなイメージがある。タイムテーブルを組んで、僅かな時間とはいえ、
その時間にちゃんと更新できるんだろうか。予約投稿して、代行希望するにしても、ミスって更新で
きないんじゃないかとか考えて、参加するのに尻込みしたり。

じゃあただの休日なら大丈夫かといえば、そうともいえない。むしろこちらのほうが厳しい気もする。
更新祭りという企画の主旨は、本スレでたくさんのサイトが更新しまくり、活発であるところを見て
貰うところ、だと思う。一人一人が、決まった時間に更新するだけ。こう書くと簡単そうに見える。
例え準備期間に余裕がなかろうと、出来るだろうと思う。

でも、進まない話し合いの現状を見るにつけ、それは不可能なように思えてくる。何故か? 議論と
いう名の堅苦しくせせこましい檻に入りたくはないからだ。檻の広さがどうであろうと、その中にい
れば、嫌でも他と干渉し合わなければならない。もしその檻の中に、バカがいたら最悪だ。場を乱し、
空気を悪くすること請け合いだから。

今回の議論を見てもらえば分かるだろうけれど、そのバカは僕自身であるのは間違いない。議長の進
行を妨げ、徒に場を乱し、あげく皆を混乱させた。バカと話すのは疲れる。ここはこうだろと一々説
明するのも面倒くさい。だから議論が進まない。中身が決まらないから、企画が成立しない。

つくづく思った。僕は議論に向いてない。せっかく賛同してくれた皆さんに申し訳ない。

すみませんでした。
Category: 日想  

雨は嫌いだ。じめじめとした空気が部屋に淀むし、外に出ようモノなら、服の裾という裾が濡れ、雨
があがれば、舗装された街に特有の、鼻に付く臭気がたち昇る。だから雨は嫌いだ。でも、ロンリー
ウルフな日に降る雨は、割と好き。朝でもなく、昼でもなく、夜でもなく、黄昏時に降る雨が好き。
ヤニと埃で黄ばんだ窓外から、ネズミ色の空をなんとも無しに見遣りながら、物思いに耽る時間が好
き。雨に濡れた路面を走る車が、水を切って立てる独特な音。灯り始める街の光。コーヒーの湯気と
煙草の紫煙が眼下の街を横切っていく。スピーカーからは、ボリュームを絞ったジャズが流れ、アン
ニュイな空間に彩りを加える。セピア色の写真のような雰囲気。ぼーっと、何を考えるでもなく、た
だ雨の雑踏がもたらす空気に浸り続け、焼けない雨雲が真っ暗になるまで、窓外の景色を眺めて過ぎ
る時間が好き。
Category: 日想  

スカート丈

女子高生のスカートがなんであんなに短いのか、その理由に最近気づいたよ。まさかそんなことだっ
たとは思いもしなかった。あれは性的アピールの一環みたいなモンで、あたしの足綺麗でしょ的な、
ナルシーな自己表現だと思ってた。でも違ったんだよ。

何故、高校生になったら短くなるのか。それはね、学校のトイレに原因があったんだよ。なんでも、
和式トイレでおしっこをした場合、おしっこの水滴が跳ねて靴下や靴、スカート・ズボンにつくらし
いんだよね。そう聞いて思い返して見ると、確かに和式だと跳ねる場合が多いじゃん? 僕は男だけ
ど、大のほうをするときって大体おしっこも出ちゃうから分かる。ちゃんと手を添えて、跳ねにくい
箇所に放尿しないと高確率で跳ねるのは間違いない。
その点、男は楽だ。位置を調整できるからね。じゃあ女はというと、これがまた調整できないんだよ
ね。そういう構造なの。そういう方面の、エッチな映像なんかを見てごらんよ。出口から上下に放射
してるから。そりゃスカートを短くしたくなるよね、跳ねたらばっちいもの。

ウンコ座りしなきゃ用を足せない和式トイレは女にとって最低の便器であり、天敵だった、そういう
ことだね。

ちなみに公立と私立を見比べて見ると面白い。公立の生徒のほうが短い印象を受けるから。まぁこれ
は、単に被写体として短いほうが良いからとも考えられるけど。まぁどうでもいいよね。
Category: 感想文  

『ゼロの焦点』 松本清張

舞台は戦後間もない昭和三十年代初頭の日本。
東京に住む主人公、板根禎子は、周囲の女からは多少のやっかみを、男からは好奇の目線を注がれる
ようなそこそこの美人でありながら、戦後の煽りか、はたまた巡り合わせが悪いのか、そろそろ薹が
立ったと言われそうな二十六という歳になって、周囲の薦めにより、お見合い結婚に至った。
相手は一回り年上の、広告会社に勤める男だった。二年ほど前から北陸方面の出張所主任を勤めてお
り、近々、本社のある東京に栄転するという有望な男の風体は、広告業という職種とは不似合いな、
北陸の雪を思わせる翳りの中に、時折はっとするほど真逆な明るさを垣間見せ、内面の複雑さを物語
るようであった。
新婚旅行もそこそこに、業務の引継ぎのため北陸へと発った男は、しかしそのまま失踪する。
結婚したばかりの夫の、突然の失踪。ほとんど何も知らないと言ってもいい夫の影を追う中、度々起
こる殺人事件とともに、闇に包まれた夫の過去が明らかになっていく。

とまあ粗筋はこうだ。面白いことは間違いない。ただ、途中から犯人の目星がついていた、というか
つけさせられていたせいか、禎子の推理の流れが緩慢に思えてじれったいったらありゃしない。初読
はそのせいで終盤、身が入らず。これは二度三度と読んで初めて真価を味わえる類の本だと思う。

禎子の視点で紡がれる物語は、色々と釈然としないモノを残した。

1・夫の謎に迫る中、殺人が起き、禎子にはそれが誰の手によるモノなのか、ある程度の推理が出来
  ていたにも関わらず、警察には言わなかったこと。

普通なら言う。推理が間違っているという不安はあっても、殺人が起きているのに、何故言わない?
自分でケリをつけたいからとか、結婚したばかりとはいえ夫が関連した事件への疚しさだとか、色々
躊躇する理由があったのかもしれないけど、明記されていないから推測しかできない。
時代背景もあるんだろう。戦前まである種傲慢だった日本の男達より、思いのほかアメリカ人達は紳
士的であり、それが、それまで男性には卑屈的だった女性にとって新鮮な驚きとなっていたこと。そ
して、戦争により自信喪失していた男性に変わり、女性が占領軍に対して勇ましく立ち向かっていた
ということによって、それまでの男女間の価値観が変わったと、本書には書かれている。その結果、
日本の男達に対する不信感みたいなもんが無意識の底に芽生えていて、それにより禎子は躊躇したの
だろうか? 塵もつもれば、というし、一つ一つの要素が集まった所為、なのかなぁ。

2・夫の本の中に隠すように挟まれていた二枚の家の写真。何故そんなモノを撮ったのか?

これはホントにわからない。背景を考えれば、撮る意味も判らないし、とっておく意味も判らない。
必然性が分からないから舞台装置にしか思えない。でも禎子の視点で語られること、事件が終われば
物語りも終わるということを考えると、これは仕方のないことか。

3・納得のいかないラストシーン。

秘密を守るために殺人も厭わなかった犯人が、なぜ、あのような最後を向かえたのか? それまでの、
聡明で怜悧なイメージとそぐわないというか。因縁の地とでも言うべき場所で、印象的な詩をこの為
に用意したと言わんばかりのラスト。これまでもやもやしていた不満がこのラストで爆発した。
でもこれは時間を置いて再度読めば、また印象は違うのかもしれない。


面白いことは間違いない。ただ、推理小説としてはどうだろう? という感想。

読むきっかけはこちらの方のレビューから→RUNNERS LOW
Category: VIPでテキストサイト『共通テーマ』  

VIPでテキストサイト共通テーマ『虹』

洗剤を手で泡立て、シャボン玉のような気泡を作ると、その表面に虹にも似た煌めきが生じる。泡の
プリズムだ。手を少しずらすだけで、虹はキラキラと輝く。その美しさに眼を奪われ、じっと見つめ
続ける内に、いつしか心が現実から遊離していく。

人は無軌道なモノを見ると落ち着くらしい。例えば火の揺らめきなんかがそう。僕はモノを考える時、
よくライターを点火させて揺らめく火の中に神経を埋没させる。そうすると、乱雑な思考の流れが整
理され、一本の道に思考が集約されるような意識の檻に囚われる。
泡のプリズムにも似たような感覚がある。

だから僕は湯船に浸かるとき、必ずと言っていいほど虹を見る。いや、正確には『見遣る』。虹の先
に空想の世界を映えさせ、脳裏に展開する妄想にただただ没頭する。あるときは着崩れた服装の野暮
ったいニヒルな探偵であり、あるときは病に侵され余命いくばくもない気鋭の新進作家であり、ある
ときは亡霊の燐火にとり憑かれた亡国の王子だったり。その時その時の、影響されたモノによって夢
想の中身は形を変えるけれども。

お風呂場の空間と湯の温かさが、重力に押しとどめられた煩わしい現身のくびきを切り離して、心の
小宇宙を開放し、その広大なスペースに、想像の翼をはためかせていく。

心と身体を遊離させる、僕にとって最高のリラクゼーション。それにもし、名前を付けるとしたら?


しばらく沈思したあと、ある俳句が脳裏に浮かんだ。

『咳をしても一人』
Category: 日想  

変調をきたすバイオリズム

窮屈な姿勢で射精すると、精子を出し切らないせいか、高確率で陰嚢がしくしくする。

分かるかなぁあの感じ。痛む、というより、疼く感覚。例えば腹を下すと、血の気が降りていくよう
な感覚に襲われるけど、そのオチル体感が、秘部からしくしくと発するというか。

うーん、言葉にすると難しいな。とりあえず実践して、この感覚を共有してほしい。

手順は簡単だ。便座に座りながらシコって、イキそうになったら、座ったまま身体を俯け、腰を引い
て便器内に出す。大事なのは、陰茎を下に押さえる事。そうすればこの変な感覚を体験できると思う。

といっても誰もやらないか。

多分、トイレでセンズッたことのある人は分かる感覚、だと思う。
Category: 日想  

尾羽打ち枯らす

隣の花が赤く見える事この上ない。

これまで「面白い」「つまらない」といった感覚でしか物事を捉えていなかった身の上としては、何
かを語るという行為がひどく難しく思える。一言に「面白い」「つまらない」と言うことは簡単だ。
では何故面白いのか、何故つまらないのかを語れと言われたら、途端に言葉の接ぎ穂を失う。それま
で深く考えようとしなかった感覚を言語化する事。面白いとは、つまらないとは何ぞやと考えれば考
えるほど、論理の網に囚われていく。まるでゲシュタルト崩壊を招いたかのように、言葉の意味を失
認する。何故面白いと思うのか。何故つまらないと思うのか。その一つ一つの要素が相まって、面白
い・つまらないといった感覚で捉えた全体像に帰結する。落ち着いて考えれば分かること。だけれど、
これまでの人生で培われてきた可能性の欠如が、自己否定意識を呼び覚まし、弱気の虫が頭をもたげ、
思考停止に陥るのだ。お前には無理だ、お前には不可能だと、壁という壁から逃げてきた性癖が告げ
る。そうやって卑屈になればなるほど、可能性の芽を潰していくことは明白なのに、習い性となった
否認が向上心をはぐらかす。

これではダメなのだ。闘わなきゃ、現実と。向き合わなきゃ、現実と。

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」

そう心に強く言い聞かせて、闘志の萌芽に栄養を注ぐ。しかし、日々の自堕落な生活が、養育の手を
鈍らせ、覚醒することのない芽はその身を腐らせていくのだ――。
Category: 日想  

不調

四六時中椅子に座っていると、菊紋に異物を感じるときってありませんか。
えっ、痔? 痔なの? たまさか脱腸? との思いが見たくもないアナルを恐る恐る観察させる。
鏡越しのアナル。こう書くと少しばかりかっこいい、なんて思いながら、出来るだけ薄めにした視界
から見える景色は圧巻だった。
自ら見る事はないであろうと思っていた肛門様のお姿。
毎日毎日、上の門から登校してくる肉や魚や野菜といった生徒の群れを、あまり想像したくない過程
を経て、下の門から下校させる無くてはならない僕の校舎。その大事なところを守ろうと、幾ばくか
の心もとない陰毛が門衛に立ち、これまでに卒業させた生徒達の残した軌跡が、黒ずんだ表皮となっ
て、校門をよりグロテスクに映えさせている。
脱腸やら痔やら、その症状の画像は見たことはないし、金輪際知りたくもないから、僕の肛門が正常
かどうか、医学的見地から推測は出来ないが、特に異常はないように思えて、ほっと人安心する今日
この頃。
Category: 日想  

漫画や小説などの原作を、アニメや映画にして、その内容に納得がいかないと「原作レイプ」と叫ぶ。
今まで事ある毎に、当たり前のように使ってきたその言葉が、脳裏を過ぎり、こだまする。眼前に羅
列された文章という名の器が、こんなモノ受け入れられないと怒声を上げ、わなわなと震える穢され
た身体に亀裂が走る。その様相から、しでかした事の重大さを今更のように感じ、やってしまったと
煩悶する我が身の不甲斐なさ。
承諾も無しにいきり立つ思惟を器に注ぎ、決壊させるに至った行為を強姦と呼ばずして何と呼ぶか。
それ単体で一つの芸術を形作っていたのに、余計なモノを付け足して台無しにしてしまう。例え余分
なモノを消し去ったとしても、一度壊したモノは元通りにはならない。何故か? そこには消そうに
も消せない壊れたイメージが付きまとうからだ。見かけは元通りでも、記憶に刻まれた陵辱の幻視が
復元された器を損なわせる。ケチが付いた代物。
そのくびきを払拭しようと足掻いても、行き着くところは同じだ。受け入れてくれる人もいるかもし
れない。けれど、それが作者の手でない限り、「レイプ」と断じる者はいなくならないだろう。

という、言い訳と自戒。
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習慣

1.煙草。十代の頃からマルボロメンソールライトを吸い続けている。何度か浮気もしたけれど、や
っぱり初体験の思い出が忘れられないように、この銘柄に戻ってしまう。肌荒れ? この世に生まれ
落ちた時から顔面は終わってるので気にしないね。

2.コーヒー。豆から挽いたりなんて面倒なこだわりはない。スーパーに売っているスティック型の
一箱十包程度のインスタントを愛飲している。これは煙草を吸うせいかな。季節を問わず、一年中飲
んでる。胃が荒れる? いや、もう身体が順応したのかそんあことはない。

3.ぷっちょソーダ味。これはここ最近だね、一年ぐらい前から。ガムとかグミは別段、好きでもな
かったんだけど、これは病み付きになる。ソーダのシュワシュワ感と相乗した甘さ、たまらないね。

4.ネトマ。音楽やラジオ聞きながら打ってる。これもここ一年ぐらいか。頭の体操って感じ。大し
て考えながら打ってるわけじゃないけど、聞きながらやってるといつの間にか何十局も、ってパター
ンね。お気に入りラジオは、有吉の「こんなやつがいましたコーナー」。

5.二ちゃんねる。これはあれだね、気づいたらなんかしらのスレを開いてて、もう息を吸う事と
同義になってる感じ。

ざっと欠かさずやってることってこれくらいか。止められないことっていうか、依存っていうか。
我ながら見栄えのしない習慣でした。
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アンニュイ

何も考えたくなくて、何も手につかなくて、それでいて何かを欲っする心の飢え。眠くもなくて、食
欲もなくて、性欲も湧かない。押し出すような吐息がため息に移り変わり、心体を沈鬱させる不定愁
訴に苛まれる時。曇った心象を払いたくて、当て所なく街を歩いたり、ただただぼんやりと、ディス
プレイに踊る映像を見遣ったり、虚空を見つめたまま、音楽の調べが右から左へと流れるに任せたり。
そうやってうつろいゆくメランコリーな日は、心が空っぽになったような気分にさせられる。壊れた
機械。物言わぬ人形。空虚な檻に閉じ込められ、そこから出ようにも、どうすればいいか分からない。
出口を指す光が見出せず、闇雲に足掻いては徒労に終わる。

そんな日。そういう日。こういう日は、だけれど思いがけない所から風が吹き、淀んだ空気を一新し
てくれるモノなのだ。なにが閉じられた扉の鍵になるのかは、その日その日によって違うけれども。
喜怒哀楽の琴線に触れたソレは、シンと静まった水面に波紋を、さざなみを立たせ、心を震わせる。

偶然の産物。望外の希求。今日、未知の大海に僕が見出した航路は、何度見たか知れないこの動画だった。


道重さゆみ、この年17歳。アイドルになど興味のなかった僕が、唯一認めざるをえなかった偶像。
関心のない人には分からないだろう。けれど、僕には拒む事の出来ない吸引力が、彼女にはある。
綺麗さと可愛さに煌めく容貌からは夢想だにしない毒舌、反感を買いそうなブリっ子の仮面――その
下から、時折垣間見える気がする素顔。
ただ見ていたい。それだけで、心を満たす存在。それが、道重さゆみ。
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VIPでテキストサイト企画『ムカデ人間』

 この世界は、広いようで狭い。我知らず、ふっとそんな言葉が口をつく。PCデスクの上に広げら
れた一通のファンレター。姉が信奉している作家宛への、文言も想いも稚気を脱することのない付文
に、変わることのない姉の本質を垣間見た気がして、自嘲めいた苦笑に口角を吊り上げる。
 実は私、結婚します――。唐突な宣言から始まる手紙に、再度目を走らす。


『拝啓、真中樹理様。

実は私、結婚します。突然の報告でごめんなさい。でも、先生ならこうなるんじゃないかな、って事
は、分かってたんじゃないかな、って思います。だって、私の旦那様(はぁと)、樹くんのこと、先
生には包み隠さず全部報告してますから!
先生からお返事をもらったことはないけど、『恋の文は弓矢に載せて』の中に、先生からのお返事が
あった気がします。こういうと自意識過剰だと思われるかもしれないけど、主人公の雛子は私と同じ
名前だし、勉強が嫌いなところもわがままなところも一緒だし、一途なところも私そっくりなんです!
雛子に自分を重ねて、こういうところはこうしたらいいとか、ああしたらいいとか、先生と雛子が導
いてくれたんです。信じられないかもしれないけど、小説は事実より奇なりっていうし、これはホン
トのホントなんです。樹くんとこうして結ばれたのも、先生と雛子のおかげです。ありがとうござい
ました(はぁと)

ハミングバードより

追伸

次でとうとう最終巻ですね。雛子たちがどうなるかとても楽しみです!』


 ククッとまたしても自嘲の嘆息がくぐもった音を漏らす。そうだよ姉さん。その通りだ。僕が姉さ
んを導いた。弟の僕ではなく、先生の僕に吐露した姉の心想。そこから、小説のキャラクターになぞ
らせて、正答と思われる解答を導き出すのは、別段難しいことでもなかった。何故なら、この小説の
モデルは姉さん、貴女なのだから。
 始まりはちょっとした思い付きからだった。流行りのライトノベルでは、姉のような奔放で自侭な
キャラクターが人気を博しているのをみて、これなら自分にも書けると思ったから。その短絡的な思
考を後押ししたのは、生きた標本たる姉の存在と、平凡なる我が身の可能性を見出したかったから。
 物語の主軸は、姉そのままの存在を宿したキャラクターの日常を中心に、恋愛へと発展していく青
春モノ。一部のネットで「イタズラなKISS」と似ていると揶揄される僕の小説は、売れなければ
打ち切られる弱肉強食の世界で、それなりの刊数を記録していた。それももう、残すところあと一巻、
最終巻を残すのみ。十六の頃から書き続けてきた物語も、八年という歳月を経て、終焉を迎えようと
している。付かず離れずの恋愛模様をどう決着させるか、半ばまでは決まっていた。読者の期待も、
編集の意向も分かっている。だけど――と頭をもたげた一つの煩悶が、打鍵の手を痺れさせ、その要
因となっている手紙に何度となく目を走らせていた。
 自縄自縛という文字が、脳裏を巡る。見えないくびきを払いたくて、背もたれに身体を預け、背伸
びをするように凝り固まった体をほぐした。ふぅっとため息を吐き、見慣れた天上を見上げながら、
出口の見えない迷路に、木目に刻まれた顔のようなモノが笑った気がした。





 軽トラックの荷台に一升瓶のケースを積む単純作業に従事していると、もやもやとした心の霧が晴
れていくような感覚にとらわれる。Tシャツが汗を吸って少しばかり気持ち悪い感触をよそに、これ
が最後となる計九本が入る一辺が四十センチほどのケースを持ち上げ、荷台に積むと、父が我が家と
酒屋を兼ねる商店の入り口から労いの言葉を発した。
「おつかれさん」
 ふぅっと息を吐き、酷使した体を休ませる。酒屋と書かれたエプロンを身にまとった父は、伝票に
目をやったまま「用事、あるんだろ? 今日はもういいから、ごくろうさん」と、皺の目立った顔に
笑みを浮かべた。
「一応、家事手伝いの身だからね、これくらいは。それに、まだ約束の時間までは間があるし」
 奥行き五メートルほどの手狭な商店の壁に掛けられた時計は、午後五時前を指していた。約束の時
間まで、あと二時間ほどだ。
「同窓会なんだから、それなりに身奇麗な格好で行けよ。笑われるぞ」
 相変わらず伝票に目をやったまま苦言を呈す父に苦笑しつつ、はいはい、と相槌を打つ。
 酒棚が所狭しと並べられた店を通り、土間を上がると狭い居間と地続きになった父の寝室と台所が
ある。家と同じく古びた冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注いで一息に飲み干した。冷えた液体
が管を通り、火照った体に一抹の清涼感が過ぎる。返す足で風呂場に向かい、シャワーの栓をひね、
汗で湿った衣服を脱いだ。温ま湯の水流に身を浸らせ、汗の残滓を洗い流す。頭から身体へといつも
通りの手順で身を清めながら、高校時代の懐かしい顔が脳裏に浮かんでは消えていく。あれから六年。
卒業後、進学した者もいれば、就職した者もいる。進学も就職もせず、ライトノベル作家という仮面
を隠し、ライター兼家事手伝いなどというフリーターのまま世間に通っている自分は、彼らにどう移
るのだろうか。今でも付き合いのある顔をいくつか思い出し、酒にかこつけて説教でもされそうだな、
と苦笑する。
 さっぱりした身体の水滴を拭い取り、腰にタオルを巻いて二階の自室へと階段を上がった。黄ばん
だ襖を開け、箪笥から衣類を取り、身につけていく。黒のジャケットに、黒のパンツ。我ながらセン
スのない服装だが、この歳でカジュアルな格好はしたくないし、何より、おしゃれに縁のない人間に
は重用の組み合わせだ。姿見に目をやると、成人式の祝いにと、姉から貰ったブランド物の腕時計が
服装とそぐわない異質なきらめきを放っていた。一瞬、外そうかと迷ったが、誇れるモノはこれだけ
じゃないか、との思いが外しかけた手を止めた。いかにも上等そうなフォルムの文字盤は、午後五時
半を指している。そろそろ行くか、と踵を返したとき、ふと濡れたままの髪の毛に気づいた。逡巡も
つかの間、着くころには乾いてるだろうと思い、階段を下りた先の居間に、姉の姿が過ぎった。何故
か胸を打つ鼓動も一瞬、仏壇から母の遺影がこちらを見遣っている事に気づく。三十を目前にして早
世した母の笑顔は、今更ながら姉に似ていた。愛らしいタレ目に、口角に穿たれたえくぼ。福という
字が似合いそうな顔。一つ上の姉の顔を思い浮かべ、そこにほとんど差異がないことに気づいた。思
い出というにはおぼろげにすぎる母の記憶。母と姉。姉と母。何かをつかみかけていた思考の糸は、
父の声によって寸断された。
「そんなとこに突っ立って、どうしたんだ」
「いや、なんでもない。そろそろ行くよ、遅れるとあれだからね」
「おう、いってらっしゃい」
 父の声を背に家を出る足は、思いのほか早足だった。





 がやがやと騒がしい居酒屋の一角、座間という座間を貸しきって懐旧の酒宴に沸く同窓会に、一人
居心地の悪さを感じながら飲み慣れない酒に頭を鈍らせる。周りを見渡せば、見慣れは落ち着いてい
てもその心は未だ若さに溢れた面々が日頃の鬱憤を爆発させていた。
「おい、暗い顔してどうしたんだよ? 祝いの席だぜ、派手にやれよ」
 酒に火照った顔をこちらに向け、スーツ姿の和也が背中を叩く。休日だというのに、仕事に行った
帰りでここに来たらしい。社会人とは大変なもんだな、とぼんやり鈍った脳裏に言葉が浮かぶ。
「そうでもないよ、楽しんでるさ」
「そうかぁ? まぁ、お前は俺らと違って、気楽な身分だからな。社会に出て、上司の理不尽に堪え
凌ぐこっちとしては、騒げるときに騒げないとやってられないってもんよ」
 したり顔で箸をすすめる和也の横顔が、一瞬曇ったような気がした。
「そんなに大変なのか? 理不尽ってどんなの?」
「無茶を承知で横暴な注文をつけてくる感じかな。俺はデスクだからまだマシだけど、営業にいった
同期はひーひー言ってるぜ」
「パワハラがどうとか一時問題になってたけど、実態はそうそう変わるものじゃないんだな」
「そりゃそうさ。金を稼ぐってな大変だぜ。お前んとこもそうだろ」
 和也の問いかけに、そうかもしれない、と独りごちる。ただの酒屋が、今のご時世、まがりなりに
もやっていけてるのは、父の努力の賜物だろう。配達や店番を手伝うくらいで、営業になど行った事
のない自分には、小さな店子を守る父の苦労は想像に難くない。
「大人になるってのはさ、我慢するってことなんだよ。色々なしがらみにどうにかこうにか折り合い
をつけて、社会を動かす歯車の一つになる。要は妥協だよ、それが人生さ」
 生きるために、やらなければいけないこと。やりたくなくても、為さねば生きていかれないのが人
生、か。なら、自分はどうなのだろうか。期待された結末。要求される帰結。それに報いなければ、
僕は大人とは言えないのだろうか?
「そういえばお前の姉ちゃん、結婚するんだってな。健二から聞いたぜ、あいつの姉ちゃんが先を越
されたって嘆いてるらしい」
 和也とともに高校時代からの友人である健二は、この場にいなかった。仕事に忙殺され、休日とい
う二文字は今のところ彼の辞書にないらしい。
「耳が早いな。ついこの前、両家の顔合わせがあってさ、すげぇ緊張したよ」
「そりゃお前が地に足をつけた生活してないからだよ。ライター、だっけ? まだ続けんの?」
 小ばかにしたような声音にむっとするのもつかの間、そう言われても仕方ないよな、と一人嘆息す
る。ライターじゃない、ライトノベル作家なんだよ。小説家なんだよ。と心中に呟き、実は姉をモデ
ルにした小説を書いてるんだよ、しかも高校の頃から、なんて今更言えない。身内をネタにしている
事と、ライトノベルというモノの印象を決定付ける表紙絵に対する気恥ずかしさ。嘘を吐き続けてき
た事への疚しさ。ましてそういったモノに感心のない和也たちには尚更言えない――。
「――そろそろ、まともな職に就こうと思ってるよ」
「その方がいいぜ、もう二十代半ばなんだからさ。三十過ぎたらもう――えっ、なんだって?」
 横合いから割り込んできた酔っ払いに、言葉の接ぎ穂は遮られた。
「うん、そうだな……」
 がやがやと騒がしい居酒屋の一角、一人異物のような感情を抱えながら呟いた声は、喧騒に紛れて
消えた。





「なーなーおっ! どう?」
 純白のウェディングドレスを着た姉の姿は、変身するとはこういうことかと思うほど見違えて見え
た。綺麗というより可愛い顔立ちだった姉が、何故かとても美しく見える。動揺が喉を突っ返させ、
どもる言葉が自分の声ではないように聞こえた。
「あっ、うん、綺麗だよ、姉さん」
 言った途端に恥ずかしさがこみ上げ、赤面していそうな顔を背けた。
「あれ? もしかして、照れちゃってる? ねえ? なーなーお?」
「違うよ、気管になんか詰まっちゃって、変な調子になっただけ」
 我ながら子供っぽい嘘を吐き、ごほごほと咳き込む真似までして、見透かされた本心を隠そうとす
ればするほど、羞恥の沼にはまっていくようだった。
「ふふん、その反応、さてはおぬし本当に恥ずかしがっておるな?」
「だから違うって言ってんだろ」
「照れない照れない。弟くんにこうまで褒められて、あたし幸せだなぁ。ねぇ、お父さんはどう?」
「あっ、うん、とても綺麗だよ雛子」
 水を向けられた父も僕と同様、これから始まる挙式のせいか、はたまた娘の晴れ着姿のせいか、緊
張と動揺を露わにした声音が、教会の新婦控え室に響いた。
「あははっ、お父さんまできんちょうしてるーっ! なんかあんた達のおかげで、緊張感がなくなっ
ちゃったわ」
 笑いながら僕らを見やる姉の顔は喜びに溢れていた。つられて笑いそうになりながら、羞恥の首を
もたげた感情が足を出口へと向けさせる。
「そろそろ始まりそうだから、席に行くよ」
 姉の微笑みを尻目に、足を急がせた僕に追従し、父も「じゃ、わしも外で待つかな」と足並みをそ
ろえた。
「さすが親子ね、似たもの同士」と、姉の声が背に刺さる。むっとしたのは父も同じようで、仏頂面
のまま僕らは、もう既に集まっている両家の親族・友人連の集まる式場へと向かった。その手前で、
父が突然「話がある」と切り出し、外へと足を向ける。何だろうと思いながら、父の後を追って教会
の外、遊歩道にあるベンチに並んで腰を下ろした。
 黙ったまま、父はよく晴れた空を眺め、唐突に「母さんに見せたかったな」と呟いた。そうだね、
と相槌を打つ。母さん。姉によく似た母の記憶は、多分、姉さんも朧気にしか記憶にないだろう。
「雛子は、母さんに似てるよ」
 しみじみと語る父の声に、そうだね、と同意する。
「本当によく似てるよ。顔も、性格も、な」
「性格も?」
「ああ、母さんは陽気な人だったよ。元気で、奔放で、それでいて憎めない、っていうかな。雛子は、
母さんの性質をよく受け継いでる。だからかな、喜ぶべき日なのに、なんだか涙が出そうになるのは。
手放したくないと思うのは――。お前も、そうなんだろう?」
 ドクンと胸が跳ねた。今まで向き合おうとしなかった心想。確信を突かれたという思いが、これま
での凝った心の澱にさざなみを立てる。
「お前の書いてる本、わしも読んでるんだ。雛子をモデルにしてるから、雛子には内緒にしといてく
れって、お前言ったよな。お前があまりの剣幕で頼むから、雛子には言わなかったけど、実は気にな
ってな、隠れて読んどったんだ。内容はわしには若すぎるもんだったけど、雛子が――雛子そのまま
の存在が、雛子の見聞きした人生を覗かせるようで、それだけで――な。なんとなく、お前もわしと
同じように感じているんじゃないかと、思ってな」
 脈打つ鼓動に絡んで、なんだかよく分からない感情がこだまする。父の独白は僕の独白だと認める
一方、認めたくないと想う心が相反する。俯けた顔を見られたくなくて、立ち上がろうとしたとき、
父が「時間まで散歩してくるよ」と言い残して、その場を去っていった。
 立ち上がりかけた腰を下ろし、地面の一点を見つめたまま、煩悶する脳裏に心の声がこだまする。
取られたくない? 姉を? 子供っぽい感傷だと切り捨てる声に心の澱によどったモノが反駁する。
姉は――雛子は、僕のモノだと。僕が産み、作り出したモノだと。そこに、姉に雛子を、雛子に姉を
重ねるのはお前のエゴだと理性が告げる。物語の中でも、現実でも、雛子は、姉は、雛子そのものと
して生きる。生きねばならない。何故なら、雛子らしさを失った時点で、それはもう雛子ではないか
ら。
『大人になるってのはさ、我慢するってことなんだよ。色々なしがらみにどうにかこうにか折り合い
をつけて、社会を動かす歯車の一つになる。要は妥協だよ、それが人生さ』
 和也の声が脳裏を過ぎる。大人になり、折り合いをつけねばならない。じゃないと、僕は先に進め
ない。子供じみた感傷を切り捨て、そして――そう、雛子は、雛子として生きる。人は誰かのおもちゃ
ではない。僕も、父も、姉も。物語の中の雛子も。未だわだかまる感情に妥協点を見出したような気
がした。心の澱は溶解したわけではない。けれど、心持ち軽くなった身体を立たせ、一歩一歩大地を
踏みしめていく感触は、これまでのモノとは違っていた。


 何ていう曲だったか思い出せないクラシックの音色の中を、父に伴われて姉が、この日のために敷
かれたと思われる赤い絨毯の上を歩いていく。その左右には両家の親類や友人達が思い思いの感情を
顔に浮かべ、その歩みを見守っていた。神父の前で待つ新郎の前まで来ると、新郎が父に代わって姉
の手を取り、祭壇へと誘う。神父が厳かに誓いの儀式を執り行う様子を見ながら、巣立っていく雛子
を垣間見たような気がした。





『○○雛子様

拝啓 秋風が立ちはじめ過ごしやすい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、突然のお手紙、驚かれたでしょうか。ファンレターには返信しないつもりだったのですが、ど
うしても感謝の心を伝えたくて、筆をとった次第です。
 雛子さんの温もりが伝わるような、暖かい手紙にはいつも勇気付けられ、そして、物語の中の雛子
も、雛子さんのおかげで未来が開けたと言っても過言ではありません。雛子さんのほほえましい手紙
の中に、雛子と同調する部分を見つけ、勝手ながら参考にさせてもらっていました。心よりお詫び申
し上げるとともに、暗夜の灯にも似た道標に、満謝の感で一杯です。
 書きなれない手紙に四苦八苦しながら綴った拙い文言に気持ちの一片でも汲み取って頂ければ幸い
です。

                                          敬具

追伸

雛子の物語はまだまだ紡がれます。それがどんな形を取るのかは私自身、まだ決めかねておりますが、
雛子さん同様、雛子の人生もまた続いていくことをここに約束します。
最後に、私の大好きな詩を書き連ねて、結びの文とさせてください。

     真実一路の旅なれど、真実、鈴振り、思い出す   』


Category: 日想  

四月一日

僕は小学六年から中学一年ぐらいまで、痴漢にハマっていたことがある。何故そのような行動を思い
つき、行為に至ったか、それは明確にすぎるほどの衝動のためだった。性への、異性への飽くなき好
奇心だ。いけないこと、やってはならないことだと頭では分かっていても、知りたい、触りたいと言
った浅ましい欲求が、幼く、倫理という言葉の意味もようやく理解し始める年頃の少年にはとても衝
き留めることの出来ない衝動となって身体を動かし行為に至らせたのだ。

やってはならないことへの背徳感、バレやしないかと胸をどきまぎさせる罪の意識、そして触れよう
としている女性の魅惑的な体に注がれた興奮に輝く瞳と抑えきれない吐息。ゾクゾクする高揚感と緊
張感。その瞬間、僕は一匹の獣と化し、草を食む羊の群れを舌なめずりしながら見遣るのだ。卑しい
獣欲に身内を浸らせ、獲物に喰らい付くそのときを思い描き、射精にも似た陶酔に心身を火照らせる
利己的な情動。子供なら警戒しないだろう、子供なら例え弄られようと、まさかという思いが叫ぶ声
を凍らせるだろうと、無意識の理解が行動に拍車をかける。子供ほど残酷でエゴイスティックな生き
物はいない。あの頃の僕は、飽くなき異性への好奇心にその身を焼かれたエゴの体現者だった。

初めて及んだとき、僕はそうしようと思い立って行動したんじゃなかった。暴れ馬のごとく身内を蠢
き心を乱す御しがたい欲求を自慰によって吐き出しながら、それでも収まらない凝った情念にどう折
り合いをつければいいのか分からず、度々、近所のコンビニに行くとかこつけて夜の街をあてどなく
彷徨っていた僕は、偶然か必然か、人気のない歩道に一人のOLらしい人影を見つけた。

闇に溶け込む黒い髪と黒いスーツに、一際眼を惹く白い二の足。瞬間、どっと興奮と焦燥が押し寄せ、
肉感的なオシリに目が吸い寄せられた。一瞬の逡巡もつかの間、逸る心を抑えつつ、先を行く彼女の
後をつける。後ろから突然触れば、悲鳴を上げられることは分かっていた。どうしよう。どうすれば
いい。走り去る間際に触るか、それとも――。刹那、彼女は歩みを止め、振り返る挙動を示した。
急速に後悔の念に囚われる。やっぱり、風となって触れば良かった。いやでもと相反する愚にもつか
ない想念の糸は、半身をこちらに向けたまま立ち止まった彼女の姿にブツリと音を立てて途切れた。
四つ角の交差点。車道という海の対岸にあるのは当然のごとく歩道だ。横断歩道という名の橋を渡っ
た先には三つの道がある。彼女の体の向きを北とすれば、北は横断歩道と直進する道。東は、四つ角
の交差点を形作る、もう一つの横断歩道。西は僕と彼女が歩いてきた道だ。この内、西はないだろう
と当たりをつける。なぜなら、踏破してきた道を戻るとは思えないし、その先に民家は見当たらない
からだ。とすれば、北か東か。このときにはもう、頭の中にプランが出来上がっていた。先回りし、
すれ違いざま揉み逃げる。四.五人は並んで歩けそうな幅のある歩道で、不用意に近づけば警戒され
ることは容易に判別できることだったが、そのときの僕には斟酌に値しない問題だった。要は、触れ
ればいい。逃げられたり、悲鳴を上げる暇を与えなければいいのだと。そうして覚悟を決めたとき、
彼女が橋を渡りだした。そのまま、北へと直進する。あとをつけながら、回り込むにはどうしたらい
いか考えていた僕は、一計を案じた。ジョギングのフリをして通り過ぎ、また返ってくればいいのだ。
走っていれば容易に彼女との距離も詰められる。一石二鳥の名案に、悦に入るのもつかの間、すぐに
行動に移した。彼女を追い抜き、二百メートルほど先の交差点で踵を返す。ターンの要領でスピード
を緩めぬまま、一目散に彼女のほうへと足を向けた。徐々に詰まる距離と比例するように興奮と緊張
が高まっていく。近づくにつれ鮮明になっていく彼女の顔は、思いのほか美人だった。そうして間合
い五メートルほどに達したとき、ギアを最高速に入れ替え、ぎょっとする彼女のオシリをすれ違いざ
ま撫で、そのままの勢いで駆け去る。もしかしたら聞こえるかもしれないと思った悲鳴は聞こえず、
変わりに耳朶を打ったのは、はっはっと二酸化炭素を吐き出す自身の息遣いと、ドクドクと脈打つ心
臓の音だった。


一度味わった快楽の余韻は、そうそう消えるモノじゃない。我欲を満たしても、消化してしまえば、
また味わいたいと思うのが人間だ。あの味が忘れられない。あの味をもう一度味わいたい。一度付い
た炎は容易に消せず、次々と密かな楽しみのために夜を歩く。
そうして、次第にその行為はエスカレートしていった。面白い本を捲る手を止められないように、好
奇心という魔物が揺れる心の秩序を乱す。知りたい。先を。もっと先を、と。

そして僕は、やってはならない事に手をつけてしまった。述懐したくない心のオリモノ。凝った心の
蓋を開けるにはまだ早い。その想いが、気鬱する身体とともに、綴る手を止めてしまった。

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