散文誌

日記・小説

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空と匂いとそしてマフィン

先週の大寒波を乗り切り、暖冬といわれた今冬も残りわずかとなった月末、絶えて久しかったブログに手を付けたはいいものの、さてはて何を書こうかと、冷える足をすりすり、悩む頭に血が昇る。
久々に感じる脳裏の火照りは、微妙な疼痛のようで気色が悪く……。このままではまずい。いや、もうすでに綴る手を止めたくなってきている。早急に、激烈な気分の変化を生じさせねばならない。

その為には何をすべきか……? 一寸の黙考によって、僕の目はある一点に止まった。光という光を、これでもかと遮る遮光カーテン。まるでその先に開かずの間でもあるかのように、年中閉じたままの我が家のカーテンには、青黒い地の先に、微かに光の光点が差し込んでいた。(僕はいつもカーテンを開けない。何故か? 陽射しによって大気中の埃がクローズアップされるのを見ることが嫌だからだ。ちなみに窓も開けない。洗濯等の煩わしいモノはコインランドリーで済ませるべき代物だ)
やはり、というべきだろうか。激烈な変化を求めるには、嫌なモノへ目を向けなければはじまらないのだ。僕はそう結論付けると、重い腰をあげ、恐る恐る窓に近づき。やにわに手を引いた。
シャッと音を立てて開いたカーテンの先から、朝の爽やかな陽射しが眼球を突き、思わず目を細める。徐々に開いていく目に映じたのはやはり、空中を舞う、一体全体なんの成分によるモノなのか想像もしたくない微物だった。汚らわしいという思いが、咄嗟に窓を開け放つ。思いのほか強い風が寒気とともに身体の脇をすり抜け、一瞬にして体表という体表に鳥肌が立ち、マイサンが縮み上がった。横っ面を叩かれるような強烈な気温の変化が、渾然とした脳内を撹拌し、澱んだ気を一掃させる。ハッとするほどの気分の変化。求めていたモノを手に入れた喜びもつかの間、何やら辺りを漂っている異臭が鼻をつき、余計にすぎる関心が、すっきりした脳内に蔓延り始めた。

先ほどとは毛色の違う気色の悪さ。たちまち気分を害した僕は、この原因を作った妙に甘ったるいその匂いの元凶に向けて、想いよ届けとばかりに盛大に、苛立たしげに舌を鳴らしながら、一体、こんな日曜の朝っぱらから、胸がむかつくような匂いを辺り一帯に出してるのはどこのどいつで、何を作っていやがるんだとベランダから目の届く場所という場所を睥睨しつつ、どことなく以前、嗅いだことがあるような匂いについて記憶を漁っていた。
似たような匂いを嗅いだことが確かにあると、記憶を司る海馬から信号が送られてくる。幾万ものファイルに綴じられた記憶をパラパラと捲っていくと、あるひとつの情景が脳裏に浮かび上がった。
都心の繁華街等に通じる駅のホーム。立ち食い蕎麦屋や売店、喫煙所などの中の、パン屋の姿。そこから漂ってくるあの何ともいえない匂い。これだ。パン屋だ。またはそれに近いモノに違いない。

そう確信した途端、本当にそうなのか確かめたくて仕方がなくなってきた。取るものもとりあえず、部屋を出、通りへとくりだした僕の目に、新規開店セールのノボリをかけた、こじんまりとしたスイーツショップらしき姿が飛び込んできた。近くに寄れば寄るほど、匂いは強くなってくる。ここに間違いない。どうやらまだ開店前のようだ。ウインドウ越しに、なにやら立ち働いている人の姿が見える。店の前に出された立て看板には、可愛らしいカップケーキの絵と、当店一押しチョコチップマフィンの添え書き。

なるほどマフィンが原因かと妙に納得し。何故か気落ちし。とぼとぼと部屋に戻り。窓とカーテンを閉め。黙々と起きた出来事を打鍵し。文章として組みあがっていく様をみるにつけ。テキストのネタが出来たと喜ぶべきかどうなのか、なにやら釈然としないシコリのようなモノを抱え、僕は今日を生きていく。
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