散文誌

日記・小説

Sort by 06 2016

Category: 日想  

無理無体

午睡などでまどろんでいるとき、夢と現実の区別がつかなくなることが往々にしてある。いや、区別がつかなくなるという言い方はなんだか分かりにくいな。夢、もしくは妄想の檻に囚われたまま、頭の中の世界が現実だと認識してしまう、という感じか。そしてその感じはしっかりと目覚めるまで続き、まどろんでいる限り、仮想の霧は一向に消えやしない。
つくづく思う、不思議だなぁと。あるときは以前働いていた職場でのことであったり、または学生の頃のことであったり。覚えているのは主に過去での出来事だ。正確にトレースしている場合もあれば、全く違う理想の自分が、理想の過去へとリメイクしていたりもする。
夢を見ることには何かしら意味があるんだろう。フロイトだかなんだか知らないだが、僕は心理学が嫌いだ。でも興味はある。けれども、心理学に関連する書物、テキストを読んでも、一向に頭に入ってこないんだ。意味を理解しようとする気がおきない。重ねて言うが、興味はあるんだ。でも理解する気になれないんだよ。分かるかな、この気持ち。心理学という学問がどういう学問なのか、大して知りもしないのに、何故か毛嫌いしてしまうんだ。どうしてだろうね?

ところで指を切ったんだ。でも血は出てなくてね。よくみると甘皮だけを切ってる。2ミリぐらい、直線にスパっと。どうして切ったのか、まるで覚えがない。朝起きたときは切れてなかったんだ。でも、夜になってふと指を見てみると、切れてた。どこで切ったんだろう? その日一日の行動を思い出してみても、指が切れるような作業やアクシデントに見舞われた覚えがない。でも切れてる。どうして切ったのか、不思議でしょうがなかったから、聞いてみたんだよ、指に。どうして切ったんだ、おまえって。すると指はこう言うんだ、おまえは知っている。でも思い出したくないだけなんだよって。不思議なことを言う指だなと思ったよ。だって指は喋らないしね。しょうがないからゲームを始めたんだ。でも指がいうこと聞かない。おいちゃんとしてくれよ、ゲームができないじゃないか。僕はそう言って指に抗議したんだ。当然だよね、僕の指だもの。でも指は僕に対して中指を立ててきた。ふぁっくゆー。そう聞こえたよ。だから僕は制裁を加える事にした。指を叩いたんだよ、ふぁっくゆーしてる指をね、こう、ピシッと。すると、指は指を引っ込めて、僕の手が握りこぶしになってたんだ。それをみて、僕はどこかがヘンだと思った。切ったのは人差し指。でも僕の手は握りこぶしになってる。おかしいよね。そもそも僕はゲームをしてたんだからコントローラーを握ってたはずだし、中指が指を立てるのもおかしいじゃないか。僕は問い詰めた。おまえは僕の手を操れるのかと。すると突然、握りこぶしだった手がパッと開いて、こう言うんだ。そうだよ。俺はおまえを操れる。だからお前に仕返しをすることも可能なんだ、知らなかったのか? 僕はぞっとして、反射的に指に制裁を加えようとしたんだけど、上手くいかない。コントロールがきかないんだ。よく見ると僕のもう片方の腕が石になってる。驚いた僕に、指が言うんだ、ほらみろ、お前のせいだぞ。お前のせいでこうなったんだ、だからお前の顔もこうしてやる。言い終わると同時に手が顔に襲ってきて、僕の目をぞりっと削いだ。鋭い痛みが走って、ぬめっとした液状のモノが目から溢れ出してくるんだ。どくどく、どくどくと脈打つ液体が顔を染めていく。見えるんだ、自分の顔が。鏡もないのに。鋭利な傷口から、真っ赤な血が僕の顔を染めている。血はどんどん溢れ出して、いつのまにか僕は血の海に浮かび、真っ赤に染まった視界の中で、指が僕の頭を押さえつけ、こう言った。お前が悪い。お前のせいだ。お前を呪え。僕はゆっくりと血の海の中に沈み込んでいく。ああそうだ、僕が悪かったんだ。ゆっくりと僕は沈んでいく。僕は眠りつくんだ。ゆっくりと沈んで、底についたとき、ああ、眠れる。そう思ったのに、指が起きろと言うんだ。不思議なことを言うやつだと思ったよ。お前が沈めたんじゃないか。いいから起きろと指がいうんで、しょうがなく目を開けたところ、そこは血の海でもなんでもなく、現実の僕の部屋だったんだ。

しっかりと意識が覚醒して、夢だと分かったとき、ヘンテコな夢を見たと思ったよ。熱帯夜のせいかな? 一つあくびをして眼をこすると、まぶたにぞりぞりする感触がしてね、おや、もしかしてと思い、指をみてみると、指が切れてたんだ。でも血は出て無くてね、よくみると甘皮だけを切ってる。2ミリぐらい、直線にスパッとさ。どうして切ったのか、まるで覚えがない。昨日、寝るまでは確かに切れてなかったんだ。どうして切れたんだろう? 不思議なこともあるもんだ。僕はトイレに行き、珈琲を淹れ、気だるげに紫煙をくゆらしながら、今日も憂鬱な一日が始まることにため息をついた――。
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