散文誌

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お題バトン『しぐさ』

公園で飯を食っていると、どこからともなく鳩が現れ、いつの間にか囲まれている、といったことがよくある。奴らは首を前後に打ち出す滑稽なピストン動作を繰り返し、「くるっくーくるっくー」なんていかにも可愛げに鳴きながら、誰彼となく迫るのだ、おい、その飯をよこせ、と。
邪険に追い払っても、しばらくするとまた周囲に集まってくる。その厚かましい嘴を前後に揺らしながら。「くるっくーくるっくー」とバカみたいに鳴きながら。メ・シ・ヲ・ヨ・コ・セ、と、そのしぐさが物語っているのだ。

ときとして、動物は人よりも雄弁に物語るのではなかろうか。臆面もないしぐさを通して、情が表に透けてみえるとき。それは多分、どんな言葉よりも、人の心に訴えかけるモノがあるのではないかと、僕はおもう。

しぐさが語る。そのことを考えるとき、脳裏に浮かぶのは一匹の犬の姿だ。



近所の公園に犬がいた。
柴犬のそいつはホームレスに飼われているようで、ブルーシートに覆われた粗雑なテントの片隅にちょこんと居座っている。そのおとなしく飼い主に寄り添っているような佇まいをみて、僕は忠犬ハチ公を思い出した。
ある日、公園を歩いていると、ハチ公がおばあさんから食べ物を与えられていた。その恵んでもらっている境遇もハチ公のようで、なんだか微笑ましい光景だった。
ある雨の日、帰り道に公園を横切っていると、ハチ公をみかけた。ブルーシートの片隅に、雨よけなのか犬小屋なのか判別しがたい、大きめのダンボールに潜り込んで、濡れそぼっていた。その姿もまた、駅で主人を待っているハチ公を思わせた。
ある晴れた昼下がり、公園で弁当を食べていると、ハチ公が近寄って、ちょこんと居座った。そのつぶらな瞳は恵みを乞うているようだったが、僕は餓狼のように餓えていたので、とても恵んでやる気にはなれず、黙殺した。そのままがつがつと食べていると、ハチ公は僕の口元をみつめ、舌を動かし、喉をゴクリといわせながら、クゥンと物悲しげに鳴き声をあげた。そのしぐさは、お願いしますと懇願しているようで、僕はしぶしぶ、白米を一塊、くれてやった。ハチ公はぺろりと平らげると、またクゥンクゥンと鳴いてくる。もうだめ。もうやらないぞ。そう思っても、哀れみを覚えずにはいられない鳴き声には抗えず、根負けした僕は弁当の残りをハチ公に与えた。おいしそうに食べているハチ公をみて、僕は、満たされなかった腹の埋め合わせに、なにやら暖かい感情が満ちてくるのを感じて、悪くない気分だった。


今、公園にハチ公の姿はない。いつの間にか、ホームレスとともに跡形もなく消え去っていた。
元気にしているだろうかと、ふと思う。多分、元気にしているのだろう。なにせ、あのしぐさのまえには、たぶん、誰も抗えないだろうとおもうから。
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