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ムカデ人間

○:「彼は消してしまった」
▲:「それで?」
○:「それで終わりさ。彼は消してしまったんだから。続きようがないだろ?」
▲:「そりゃそうだけど、君が話したように、現にお話として残ってるってことは、結局のところ彼は消してしまわなかったってことじゃないか?」
○:「なにいってんだい、これはお話なんだから、彼が消してしまったことを知ってる誰かが彼のことを書いてるに決まってるじゃないか。語り手と彼とは別人ってことだよ」
▲:「ああ、そういうこと」
○:「そう、そういうこと」
▲:「でもさ、ちょっとおかしくないか?彼は消してしまったんだろ?消してしまうってことは、残したくなかったんじゃないのか?」
○:「そりゃそうだろうね」
▲:「だろ? 彼が消してしまったモノを、語り手の彼は残してしまった。彼の思いを踏みにじる彼の行為は、ちょっとどころかだいぶおかしいじゃないか」
○:「うーん、確かにそういわれるとそうかも」
▲:「かも、じゃなくそうなんだよ。彼が消してしまいたかったモノを彼は残した。考えてもみなよ、君がどうしても消してしまいたかったモノを誰かが残したら、君はどう思う?」
○:「許せないよそりゃあ。かんかんに怒るだろうね」
▲:「そうだろ?なのに彼は残した。最低最悪のクソヤロウだね」
○:「まぁまぁ、ちょっとおちついて」
▲:「これが落ち着いていられるかい?自分がどうしても隠しておきたかった秘密を他人に暴かれるなんて、想像しただけでも怒りを覚えるよ」
○:「まぁ分かるけどさ。それはひとまず脇においておいて、どうして語り手の彼は彼の消してしまいたかったものを残したのかを考えてみようよ」
▲:「どうして残したか?うーんどうしてだろう?」
○:「思うに、語り手の彼は彼の肉親じゃないのかな」
▲:「肉親?」
○:「そう、彼のことを愛していた肉親。彼を産み育んできた両親かもしれないし、血を分けた兄弟かもしれない。ほら、有名人が死んだらさ、その伴侶や肉親なんかが追悼本みたいなもんを出すじゃない?ああいった感じで、誰かに彼のことを知ってほしいから残したのかもしれないじゃない」
▲:「うーん、そうかなぁ?」
○:「そうだよ、きっと。葬式とかお墓とかさ、そもそも死者にとっては何の意味もないんだよね。遺族のためのものにすぎないんだよ。そうした形だけのものより、死んだ人の思いなんかを知れる文章とかのほうが、よっぽど死者のためになってるんじゃないかな」
▲:「どうかなぁ。他の場合ならともかく、この彼の場合はためになるとは思えないんだけど」
○:「そうかな?」
▲「そうだよ、彼は消してしまいたかったんだから」
○:「そういわれればそうだけど」
▲:「そうだよ」
○:「あ」
▲:「ん?」
○:「ふと思ったんだけどさ、もしかしたら、彼は自殺したとも考えられるよね」
▲:「え?」
○:「だからさ、彼ってのは自分のことなんだよ。彼=自分を消してしまった。遠回しの自殺と考えられないかな」
▲:「うーん」
○:「彼がどうして自死を選んだのか、その背景はどんなものだったのか、そうしたことを世の中に問いたくて、遺族が彼の言葉を残した。そういうことなんじゃないかな」
▲:「ふむ、自殺か」
○:「うん、自殺ね」
▲:「自殺予告」
○:「そう、自殺予告」
▲:「でもさ、どうしてそんなモノ残したんだろうね?これが事実上の遺書だとすると、どうも納得がいかないよ」
○:「なにが?」
▲:「だってさ、これから死のうとする人間が、こんな回りくどいことを書くかなぁ?死ぬならはっきり死ぬって書くか、なにも書かないかのどっちかだと思うんだよね」
○:「そうかな?」
▲:「そうだよ。そんなのがまかり通るのはお話の中だけだね」
○:「手厳しいな」
▲:「手厳しいよ」
○:「じゃあ、殺されたのかもしれない」
▲:「ええ?」
○:「自殺を装って殺された彼の遺品に、たまたま意味深な文章が残っていたとか」
▲:「そんな偶然ありえないよ」
○:「ありえるよ、世の中は奇天烈だから」
▲:「そもそも死んでるの?」
○:「まだ死んでない」
▲:「え?」

-----○さんが退室しました-----

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