散文誌

日記・小説

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お題「妖精」

 夏の容赦ない日差しが身体をジュウジュウと焼き、肉汁がジュクジュクと溢れ出る。
肌という肌から塩気を帯びた灰汁が流れ、時間が経つとともに鼻をつく刺激臭へと変わっていく。
膝上の少女、加奈子は、人が動物であるということを僕に証明するかのように、汚らわしい臭いを撒きちらしていた。
その臭いに羞恥心を感じ、ふと周りを見渡す。昼下がりの公園には暑さのためか、
木漏れ日のベンチに腰掛けた僕ら以外に人はいないようだった。
「ケンちゃん手がとまってるぅ」
 加奈子はぶすっとした顔を向け、僕を非難する。暑さと臭いのせいか、気づくとあや取りをとっていた
手が止まっていた。ごめん、と言いながら、どこまでとっていたか忘れたあや取りを最初から再度取り組む。
上下左右に指を躍らせていくと、眼下のおかっぱ頭も、指の動きに合わせて小刻みに動いていく。その様はまるで壊れた
人形のようだった。ネジに狂いの生じた小さな人形。動くたびに、身体の隙間から油脂を垂れ流していく汚らしい人形。
「わああ、できたできたぁ、すごい」
手をパシパシと叩きながら、僕の膝上で小躍りする加奈子は、在りし日の姉を――幼い頃の記憶を呼び起こさせた。
何かにつけて僕を褒めてくれた姉はもう居ず、代わりにこの加奈子が生を全うしているという現実。僕の手から姉を
奪った小さな悪魔は、あの日病院で姉の命と引き換えに、この世に産声をあげた。オギャアオギャアと泣き喚く小さな悪魔。
「ケンちゃん、早くつぎ見せてよぉ」
悪魔が媚態を含んだ声音で催促する。そよりとも風の吹かない公園で、小さな悪魔と戯れる僕は、一体何をしているのだろう。
「ねえねえ、はやくぅ」
どことなく姉に似ている顔と声のせいか、奇妙な感覚に陥る。僕が構ってやっているはずなのに、悪魔に使役されているような、
ボタンを掛け違えたかのような違和感。冗談じゃない。誰がこいつなんかのために。仕方なく相手をしているだけだ。僕はこいつの
召使でもなんでもないんだ。汚らわしい臭気を所構わず発散する悪魔に、何故僕が奉仕しなければならないんだ。
そう思うと、無性に腹立たしくなってくる。心の底から、憤怒がこみ上げてくる。おまえが姉を奪った。おまえが姉を殺した。おまえが――
気づくと、僕の手は加奈子の首を絞めていた。細く小さな首に、渾身の力をこめて。
 加奈子は、苦しみから逃れようと僕の手を引っかいては暴れまわる。驚きと恐怖に彩られた顔は引き攣り、額に貼りついた髪から
汗が滴り落ちる。グリーンのオーバーオールの下に着た白いシャツはじっとりと汗ばみ、その下の柔肌が透けて見えそうだった。
ぶるぶると震える加奈子。そうさせている僕。いつまでもこの時間が続けばいいと、狂気に染められた脳裏に浮かんだ。
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