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お題『魔法少女』

――しっかりと現実を直視して、問題に取り組まなきゃ。君はそれが出来る人なんだから。
 そう、あの男が言った。その言葉はわたしの幻想を打ち砕くきっかけの道しるべだった。
――これを飲むといいよ。毎日、お父さんの看護で疲れてる君の役に立つはずだ。
 手渡された錠剤を、わたしは何の疑問もなく受け取り、飲んだ。わたしの中で彼はもう、
信頼に値する人間だったから。
――あんた、直之を頼りすぎじゃない? 直之はあんたの彼氏じゃないのよ。それに、その
服。いい歳したおばさんが、そんなフリフリの服を着て恥ずかしくないの? 鏡を見て見な
さいよ、化け物。
 そう、あの女が言った。女の言うとおり、鏡には生活に疲れ果てた中年のおばさんがいた。
わたしは思った。違う。これはわたしじゃない。だってわたしは魔法少女なんだもの。これ
がわたしのはずがない。なにかの間違いだ。間違いに決まってる。わたしを見るな。おまえ
なんかがわたしのはずがない。違う。違う。
――啓子、どこに行ってたんだ、もう気持ち悪くてかなわんよ、早くおしめを取り替えてくれや。
 そう、父が言った。骸骨のようにやせ細り、皺くちゃの干からびた人間。これがわたしの
父。わたしを魔法少女にするためにその身体を生け贄とした父。――現実を見ろ――脳裏に、
あの男の声がこだまする。飲み下した錠剤が、わたしの魔法を解こうとする。これが、現実?
これが、わたしの人生? じゃあ、わたしは一体なんのために生きているの。わたしは父を
一生看護するために生まれてきたんじゃない。こんな、こんな現実なら――。
「いらない」
あの男と女のまえで、わたしはそう呟く。二人の驚いた顔。わたしは振り上げた包丁を、
躊躇いもなく振り下ろした。こんな現実、もういらない。
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