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共通テーマ『忍者』

忍者、と言われても僕のイメージは世間一般のそれと変わらず「暗殺者」といった影に生きる者達の
印象しかない。平たく言えば、忍者に関する知識なんてほとんど持ち合わせていない、というのが現
状だ。その乏しい識見で、何を語れというのか。僕は一寸悩んだあと、ある言葉が脳裏に浮かんだの
を知覚した。

くのいち

である。影武者徳川家康によるところの、女忍者――くのいちの役割とは、補助であると書かれてい
たように思う。男忍者が攻撃、オフェンスを司り、女忍者=くのいちがその背中を守る、いわばディ
フェンスの役割だ。身体的に優る男が道を開け、女が踏み固める、そんなイメージ。

だけれど、くのいちと聞くと、どうしても淫靡な匂いを感じてしまうのは世に溢れたエロのせいだろ
うか。女の武器を用いて、そっと寝首をかく。そのイメージが強すぎて、忍者とくのいちを分けて考
えてしまうのは男の性なのか。ほんの一足、足を踏み外せば奈落に落ちる危険と隣り合わせの淫靡な
任務。秘部に刃を忍ばせ、寝所で真価を発揮するくのいち達。快楽の愉悦と死への苦痛はどちらが勝
るのだろう。生命を創成させる行為への興奮から一転、真逆の行為による苦痛に身を焼かれる憐れな
男達。快楽と苦痛はどちらが勝るのか。気になったら即行動、なんてアクティブな人間ではない僕な
のに、何故か今このときばかりは実践する気になるのは、くのいちという単語が自慰を催す扉となっ
たのか、はたまたただの酔狂か。御託はいいからやってみろ、そんな声に促されてお気に入りのフォ
ルダを開き、下半身を露出させて、マイサンをニギニギ、おもむろにしゅぽしゅぽと走り出したら止
まらない導火線に火をつける。股間に集約される快感と、のぼせるような頭の火照りに身を任せ、一
心不乱に機関部に動力を与え続け、そろそろ達しそうな頃合に、舌を噛み、苦痛を生じさせた。
ほぼ臨界点に差し掛かったいたせいか、痛みで減じられた快感の中でも、マイサンはその爆発までの
歩みをとめず、噴火口から爆ぜに爆ぜた。急速に冷める意識と身体の感覚のなか、脳裏に浮かぶのは
違うという違和感。これじゃダメだろ、これじゃなんか違うだろという否定の感情。その差異に気づ
いたのは、後処理を施し、キーボードを叩きながら至った現行を書いていたときだった。
哀れな男達がくのいちによってその命を散らせたとき、彼らは先の苦痛を予期していなかった、とい
うことに。彼らは快楽に身をゆだねたまま、突然の苦痛によりこの世を去ったのだ。今、いや先ほど
僕が実践した行為との違いは正にそこにある。予期せぬ苦痛。これではどちらが勝るのか、実践しよ
うがない――。

虚しさに支配されたサタデイモーニング。無駄にした時間を惜しむ心もつかの間、僕は打鍵の手を止めた。
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