散文誌

日記・小説

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お題バトン『りんご飴』

りんご飴といえば、祭りなどの縁日ぐらいでしかお目にかかれない、まずまず珍しい代物ですが、先日、毎年のお決まりの行事として、一家総出で近所の大きな公園へと花見に行きまして、そこでりんご飴を目にする機会がありました。
今年は近くに移り住んできた姉夫婦も同席と相成りまして、両親や祖父母と共に酒宴の狂態、下戸の僕は適当に酔っ払いどもへ相槌をうちながら、姉夫婦の一人娘、今年小学一年生になる姪っ子のめいちゃん(仮)が退屈しないよう、女衆からの半ば強制的な命令もあり、従者、セバスチャンの役を担うことになったのです。

普段なら齢三十のおっさんが、りんご飴を食べよう、なんて思考の片隅にも浮かばないのですが、めいちゃんの小さな手を引きながら、屋台を見回っていると、「おじちゃん、あれあれ!」と、めいちゃんがある一つの屋台を指差しました。そこはりんご飴を売っている屋台でした。飴細工に縁取られたりんご飴は、屋台の明かりを受けて煌めいていて、縁日独特の雰囲気のせいでしょうか、ただのりんご飴が、実際以上に眩く見えました。めいちゃんはその輝きに見ほれたのでしょう。めいちゃんに催促され、めいちゃんに一つと、僕も一つ買う事にしました。

綺麗だから食べるのがもったいないね、なんて言いながら一舐め。甘いなぁ。二舐め。ただの飴だな。三舐め。もうけっこうです。といった按配でしたが、めいちゃんは美味しそうに食べていました。そのニコニコと幸せそうな顔を見て、何故でしょうか、悪戯心が芽生えてきました。決して、めいちゃんのせいでただでさえ寂しい懐から、ただの棒と化したりんご飴などというゴミを買ってしまった事を逆恨みしているわけではありません。僕は親戚として、めいちゃんを愛していますし、年端もいかぬ子供にあくどいことをして泣かせるような、たちの悪い大人では決してありません。

では、可愛い嘘ならどうでしょうか。その場限りの一夜の夢というモノは、女性には好評だと風の噂に聞いた事があります。僕は今年が始まって以来、初めて真剣に悩みました。可愛い嘘とはどんな嘘か。可愛い、嘘。カワウソ。ネコ目イタチ科カワウソ亜科に属する哺乳動物。泳ぎが得意であり、水中での生活に――などと、あっちこっちへ寄り道する脳裏に、突如天啓が舞い降りてきました。

それというのも、僕は考えながらリンゴ飴を頬張り、齧ったときに、ズキンと歯痛がしたのです。リンゴ飴とズキン。ズキンズキンドキンドキン。リンゴ飴と、ドキン。そう、僕が連想したのは、アンパンマンのドキンちゃんです。リンゴ飴をよく見てください。どことなくドキンちゃんに似ているではありませんか。これだ! と思い、僕はめいちゃんにドキンちゃんの由来をまことしやかに説明しました。

曰く、作者がドキンちゃんを思いついたのは僕と同じような体験をしたから。
曰く、ドキンちゃんが赤色で角があるのは、リンゴ飴をモデルとしているから。
曰く、ドキンちゃんが天真爛漫なのは、モデルとなったリンゴ飴が情熱の赤だから。

そういった嘘をまことしやかに語ると、めいちゃんは大いに喜び、楽しんでくれて、帰り道、姉からお褒めの言葉を賜るなど、僕としても記憶に残る日となりました。

それから、しばらくして。家で食っちゃ寝を繰り返す僕に母が小言を言っている時に、姉から電話がありました。僕はこれ幸いと別室に逃げ込み、姉の話に耳を傾けると、どうやらあの花見の日、めいちゃんにした可愛い嘘の事のようです。怒られるかなと一瞬、肝を冷やしましたが、姉の口調は上機嫌でした。おやおやおかしいぞと思いながら姉の話をよくよく聞いたところ。
どうやら僕の可愛い嘘のおかげで、クラスメイトの女子とお友達になれたのだそうです。姉からありがとうと感謝され、どこか居心地の悪さを感じながら、適当に相槌をうち、電話を切りました。
僕の可愛い嘘が、めいちゃんに幸福をもたらしたのなら、これは嬉しい事です。しかし、のちのちこの可愛い嘘が、めいちゃんにとって災いになるやもしれません。本当のことを言うべきでしょうか。それとも、このまま黙っているべきでしょうか。今年二度目の真剣な悩みです。僕はしばし虚空を注視したあと、オナニーをして忘れる事に決めました。
決して、逃げているわけではありません。考えてもみてください。嘘だと言ったところで、笑っているめいちゃんの顔にひびを入れるような真似を姉はしないでしょうし、どうせバれたところで、大した事はないと思ったのです。古来より人は困った事があれば、天の配剤に委ねていました。僕も、それに倣っただけのことです。大したことはない、きっと、めいちゃんの未来は明るい。あんなに可愛らしい子の未来が、暗かろうはずがないじゃありませんか。
ですが、嘘はいけません。大小の差はどうであれ、多くの嘘は人を不幸にします。戒めましょうね。




という、妄想のお話でした。
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共通テーマ『ゆきえさんとの誓い』

久しぶりに何かを書こうかなと思い立ち、今週の共通テーマはなんぞや、とスレを覗いたところ、「ゆきえさんとの誓い」という、どうにもとっかかりが見当たらない難解なテーマだったわけですけれども、ここで「無理だわ」と匙を投げるのは、問題を先延ばしにしては後々、後悔するダメ人間なのではないかと愚考する次第でありまして、よし、ならば書いて見せようじゃないのと腕を捲くったはいいものの、さてはてどう料理すればいいのかと悶々としながら、まぁつらつらと思考を垂れ流している今このとき、この時間は何の意味があるのか、僕の人生にどんな影響を与えるのかと少しばかり思考の脇道へとお散歩としゃれ込む事をお許し願いたいところなんですけれども、そうは問屋が卸さないわけでして、さぁ正道に戻ろうじゃないかと、今まさに脇道への第一歩を刻もうとしていた幻想の右足を幻想の空中でなんとか押しとどめ、その留めたエネルギー、溜めに溜まったことでしょう、零のあとにコンマ零がいくつか付くであろうエネルギーを正道へと立ち返るための振り返る動作に使おうかなと思ったのですが、ここでふと疑問が湧いてきまして、果たしてまったく運動という名の自慰なのか示威なのか分かりませんけれども、筋肉を苛めては痛覚に刺激を与え続けるという僕からしてみたら拷問に等しい、そんな愚行を時に嬉々と、時に鬱々と、脳裏に描かれた理想のボディに一歩でも近づくために、習慣として行っているような人間では僕はありませんし、そもそも「まったく」運動をしていないのですから、運キチに対する僕の一見解など今ここで述べるべきではなかったのではないかと、一抹の後悔を感じるとともに、どこからかウンキチもといウンズキの皆様方が見ているのではないかと、僕の偏見に満ちた眼を捉え、今まさに絡め取ろうとしているような気がしてきて、些かさぶいぼが出てまいりましたけれど、寒いからだ、寒いからだと念仏を唱えているうちに、寒さのほうにより強く感覚を奪われてしまいまして、どうでもいいからあったかくしてくれ、ヘルプミー暖気、との声が多勢を占めたせいで、我慢していたエアコンの暖房を今起動しましたところ、夏以降洗っていなかったエアコンの送風孔から鼻がもげそうな臭気が我が空間に漂い、たちまちのうちに消したわけですけれども、しかしですね、なにゆえたかが埃ごときが溜まったぐらいで、あのような香りを醸し出すのか、一体いつになったら全自動メンテナンスと相成るのか、頑張れ家電メーカー! と奮起を促したところで閑話休題と行きたいところなんですけれど、さてはて僕は一体何について考えていたのか、今更ながらに自問して自答し、あぁここでしたか正道さん、さぁアンサーだね、とテンポよくイきたいのですが、どうしましょうか、しょうもないネタとも呼べないゴミのようなくだらない思いつきの戯言ならあるんですけど、生まれてこの方研いだことのないボロボロの刀から切れ味の鋭いオチを生み出せるわけがないではないかとの悲しくも辛い現実から逃れることは出来ないわけでして、あぁどうしようかなと右に左に揺れる想い、ゆれ~る~おも~いぃ~♪ と言えばZARDですが、そういえば最近、僕の真上の部屋に入居した人間が踵歩きのクソヤロウでしてね、何度か壁ドンしては壁ドンし返されるという世界規模で考えたらミクロ規模のしょうもない戦争が始まったわけなんですけれども、このままだとたちまちのうちに何か、大切な誓いを破りそうで怖いです、ということで末尾了。
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お題バトン『時間』

 交差点の一角に、ひとだかりが出来ていた。トラックが横断歩道を半ばまでふさいでいる。白い白線には黒いタイヤ痕と、朝日を浴びて照りかえる色鮮やかな赤い飛沫が散っていた。誰もが一点を見つめていた。トラックの前輪に乗り上げられ、うつ伏せに倒れている女性を。腹部から両断されたように見える女性の手は、夥しい血に塗れたアスファルトを掻いていた。震える指が指し示す先にある便箋を、手繰り寄せようとするかのように。誰もが魅入られたように女性を見つめていた。遠くからサイレンの音が迫ってくる。女性の震える指が一瞬、空を掻いた。それが最後の命の灯火だったのか、ぴくりとも動かなくなった女性に、誰も近づこうともしなかった。





 夜空に橙色の花が咲いた。一つ、また一つと、口笛のような風切り音から、ドンと弾ける火花が咲く。夜空をキャンパスに描かれる一瞬の儚くも美しい光が、花火大会に居合わせた二つの顔を照らした。少女は決まり悪そうに俯き、少年は膝に置いたスケッチブックと夜空を忙しなく行き来している。
 少女は早く家に帰りたいと思った。せっかくの花火も、話した事のないクラスメートが近くにいるせいで、落ち着いて見ていられない。それに加えて、少年がスケッチブックを照らすために点けた懐中電灯の光に寄せられ、大嫌いな虫がぶんぶんと耳障りな音を立てる。少女は段々腹が立ってきた。
 怒りの念を込めながら、ちらと少年を見遣るも、少年は黙々と筆を走らせている。そのとき、少年が花火を描いていないことに気づいた。花火じゃない。何か別のモノを書いている。少女は長い髪をカーテンに、心持ち首を傾けた。なんだろう? まだよく見えない。もう少し。あと少し。ぼやけた輪郭がカタチを帯びてきた。あれは動物? 一体なんの? 好奇心が少女の顔を真横に向けさせた。
 それはどうやら蛇のようだった。花火の尾の一つ一つが、蛇となって空を駆けている。
「なんで?」
 少女は思わず口走り、あっと口を塞いだ。少年はその声にびっくりしたあと、見られていたことに恥ずかしさを感じたのか、顔を俯け、ぼそりと呟いた。が、そのか細い声は花火の音に紛れて消えた。
なんて言ったんだろう? 少女がもう一度聞き返そうか迷っていると、少年が再度呟いた。
「龍だよ」
「竜? 蛇じゃないの?」
「日本の龍は蛇みたいな姿をしてるんだよ」
 少女はそう言われて、記憶の澱から東方の龍の姿形を思い出した。
「でも何で龍なの?」
 少年は恥ずかしそうに俯いて、「なんとなく」と答えた。そのとても内気そうな様子が、少女に親近感を抱かせた。私とおんなじなんだ。その思いが、言葉となって内気な殻を破った。
「私もよく絵を描くんだよ――」
 花火大会が終わるころには、二人は友達になっていた。少なくとも、少女はそう思っていた。





「もうすこしだよ。ほら、あともうひとふんばり」
 果てしなく続いていくように思えるくねくねとした山道を登りながら、少女は、前を歩く少年のあからさまな高揚に皮肉な笑みで答えるのが精一杯だった。酷使に慣れていない足腰が悲鳴をあげる。こんなことなら来るんじゃなかったと思いながらも、少女の足は止まる事はなかった。
 少女と少年を繋ぐのはいつも絵だった。少年の情熱に導かれるまま、少年の行くところ、至る所へ付いて回った。あるときは森へ。あるときは海辺へ。その他種種雑多な場所を経て。そうして今、中学受験を控えた冬休みに、羽を伸ばしたいという少年の赴くまま、中学校の裏山の、絶景だという場所へと向かっていた。
「ねえ、ちょっと休まない?」
「あとちょっとなんだよ、もうちょいなんだって。それに、こういうのは一気に登った方が楽だよ」
――分かったわよ。そう吐き捨てたと思った言葉は荒い息となって白い気を立てた。女の子らしい足取りなんか気にしていられない。どすんどすんと音を立てて一歩一歩前進する。そのことにいつしか気を奪われていて、少年の声に気づかなかった。
「――おーい。だいじょぶか?」
 もちろんと少女は返し、少年を見ると、何故か笑みを浮かべて右手の方を指し示している。
「なによ?」
「ここだよ。ほら、すごいだろ」
 少年の指し示す先は、そこだけちょこんとひらけた崖だった。猫の額ほどのスペースに、何故か学校の椅子が置いてある。眼下には海まで見渡せる壮観な景色が広がっていた。思わず目を瞠る。
「わお。ほんとにすごいね」
「だろ? さあ、スケッチスケッチ」
 それからはただスケッチに没頭した。筆を振るう間、言葉はいらなかった。景色と、互いの存在があれば十分だった。それは二人の習慣であったが、少女は近頃、少なからず悪習ではないかと思い始めていた。
 午後にはサンドイッチを食べながらおしゃべりに花を咲かせたが、次第に会話はとりとめのないモノになり、やがて少年はうとうとと船を漕ぎ出した。
 やがてすっかり寝入ってしまった少年に対して、少女はつと顔を合わせた。少年の髭とは呼べない産毛がこそばゆくて、少女はひとしきりその感触を楽しんだ。





――美大に行こうと思う。そう告げられても、少女は驚かなかった。閑散とした美術室の一角、キャンパスを前にした少年の背中は、固く貼り詰めていた。
 応援すると少女は言った。だけれど、一緒に行くとは言えなかった。少年が目指している美大は一流だった。少年には情熱があった。しかし、少女にはそこまでの情熱はなかった。
 少年が夢を追いかけ始めたときから、二人の間に目に見えない壁が出来た。これまで一分の隙もなかった二人の間に、違和感が生じた。少女はそれが悲しかった。
 少年は徐々にナーバスになっていった。一人にしてくれと、背中が語っていた。態度が訴えていた。言葉にはならない遠慮が、一緒に行きたいと願う少女の声を押し殺した。互いを固く縛り付け、互いを結束させたつながりが、今は忌まわしく思える。
 少女は初めて少年に疎ましがられていた。その拒絶が恐ろしかった。一緒に行きたいと言えば、少年は受け入れてくれるだろう。けれど、変わってしまった今の少年に、どう接すればいいのか、少女は分からなかった。少年の心から追い出されることがコワかった。
「今日はもう終わりにする」
 少年の帰り支度を手伝いながら、少女は今日が終わった事にほっとした。と同時に、明日の訪いに怖気をふった。





 少年の手紙はいつも味気なかった。絵画では繊細なタッチを誇る筆も、対象が手紙では能力を発揮できないらしい。文面にはつらつらと近況が書かれてあった。仕事のことや生活のこと。かつての少女にとって、少年は今も少年のままだった。もう何年も会っていない。こうして手紙だけのやりとりを続けて何年になるのだろう。待つ事にはもう飽いた。既に心は決まっていた。有給休暇もとってある。準備は万端だ。
 かつての少女は思いの丈を綴った。書きながらふと思った。手紙より、わたしが先に着くかもしれない。直接わたすのも面白い。どんな顔をするだろう。びっくりするかな? びっくりするよね? 笑む女の顔はかつての少女に戻っていた。





 這おうとして這えない。指は虚しく空を掻く。虚ろな目の先には、女が求めてやまない何かがあった。来る日来る日も、闇に覆われた世界で、唯一の光芒である何かを求め、這い、掻き、一向に縮む事のない道なき道を追い縋る。それが女の世界であった。来る日も来る日も、這い、掻き、追い縋る。
 終わりの見えない煉獄の闇。ただ在るのは唯一の光芒と、それを追い求める意識の世界に、何かが過ぎり、女は背けることのなかった光芒から目を逸らした。闇を蠢く物体が徐々に輪郭を持ち始める。
 それは悲愁が陰を落とした男の顔だった。男の佇む姿はつかの間、女に光を与えたかに見えたが、たちまち闇が覆い潰した。
 女は這い、掻き、追い縋る。終わりの見えない闇の世界で。女は今日もまた、這い、掻き、追い縋る。


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VIPでテキストサイトやろうぜから羊の水海さんより頂いたバトン。精一杯、丹精込めて排泄させていただき、真にありがとうございます。次のバトンが誰に渡るのか。それはこちらでお確かめください。
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共通テーマ『秋』

 その幼子は秋といった。頬をピンク色に染めてにこやかに、種種雑多な花や樹木が立ち並ぶ自然公園の中を、父と母に挟まれてあるいていく。初秋の昼日中、心地よい木漏れ陽と、時折吹く風に緑がざわめていた。
 母が言った。あれがコスモスよ。父が言った。綺麗だろ? 両親が口々に言った言葉は、しかし幼子には届いていなかった。つと顔を上げ、中空の辺りに目を彷徨わせながら、耳をすましている。どうしたの、と母が問うと、幼子は何か聞こえる、と呟いた。両親は顔を見合わせ、幼子と同じように、辺りに耳をすます。すると、かすかに鈴の音に似た囁きが聞こえた。父が言う。何の音だろう? 母が言う。鈴虫じゃないかしら?
 そのとき、幼子が目を輝かせて、コスモスの根に近いところを指差して、こう口ずさんだ。
「ちいさいあ~き~み~つけた」


 その少女は秋といった。手には刷毛とペンキ缶持ち、汚れないよう頭巾とエプロンを付けた姿に若干の羞恥を感じながら、長大な看板を前にして、半ば途方にくれていた。少女の周囲では人や物がごったかえし、かまびすかしい。
 少女は思う。なぜわたしがこんなことをと。たった一日休んだだけ。なのに間の悪いことに、その日は文化祭の役割を決める日だった。非常なる欠席裁判の翌日、告げられた判決を基に、少女はここに立っている。
 少女は裁縫が得意だった。趣味だった。本当なら、その特技を生かして、衣装係として存分に腕をふるっていたのに。沸々と怒りがこみ上げてくる。気の合わないクラスメートの顔がいくつか脳裏を過ぎった。ほくそ笑んだその顔を断ち切るように、少女は腕をふった。白いキャンパスに紅が散る。怒りにまかせて右に左に刷毛を走らせ、少女が息をついたとき、背後からクラスメートの声がした。
「なにこれ?」
 少女は皮肉な笑みをうかべてこう言った。「なにって、芸術よ」


 その紳士は秋といった。古びた文庫本に向けられた目はそわそわと落ち着きがなく、傍目にもその姿は本を読んでいるとはとても見えない佇まい。ジャズが流れる小洒落たカフェに、もう一時間も居座っていた。
 小洒落たマスターが入れた珈琲を、これまた小洒落たウウェイトレスが足音高く運び、既に三杯目を向かえようとしている卓に置いた。紳士はそっとカップを取ると、ちびりちびりと飲み、湯気で曇った黒縁眼鏡を三度拭う。
 茜色に染まった夕陽が窓から差し込み、紳士の顔の陰陽を浮かび上がらせた。緊張に固く結ばれた口元。張り詰めた頬を流れるひとしずくの汗。目はきょろきょろと忙しない。それは何かを待っている人の顔だった。
 紳士は眼鏡をかけ直すと、再び文庫本へと目を走らせた。しかしその目は一向に定まることなく、窓外をみやったり、腕時計にいったりと、やはり忙しない。その様子を、横目でちらちらと盗み見ていたウウェイトレスはこみ上げてくる笑みをかみ殺すことに必死だった。
 時計の針は亀のようでありながらも、着実に時を進め、夕食の頃合となり、ウウェイトレスは紳士が夕食をとるとは思っていなかったが、職業的義務感から伺いをたてにいった。
「何かご注文はありますでしょうか」
「いや、結構。そろそろお暇しようと思っていたところでね。それにしてもここのカフェはいいね。おかげで読書も捗った」
 紳士がそう告げるやいなや、ウウェイトレスはクスクスと笑い出した。
「なにがおかしいのかね?」
「だってお客様、その本、逆さまでございますよ」
 紳士はつかの間呆然としたあと、かっと顔を紅潮させ、そそくさと店を出ていった。


 その老人は秋といった。鼻をつく消毒液と微かな糞尿のにおいが染み付いた老人ホームの病室、その一角で、朽ちかけた木を思わせる老婆は腹を立てていた。誰もきやしない。薄情な親不幸ども。
 この日は老婆の誕生日だった。寝台の上にはケーキなどの食べ物がところ狭しと並べられている。下半身不随になり、老人ホームに入居してから、初めての誕生日。しかしそれが老婆の憤怒の源ではなかった。誕生日など、老婆にとってはまた一つ歳を取ったというだけのことに過ぎず、祝う気になどなれなかった。奇しくも同じ月日に生まれた孫の誕生日という意味合い以外は。
 老婆は実の娘のこの仕打ちに腹の虫が収まらなかった。目に入れても痛くないほど可愛がっていた孫。その成長の記念たる日に見合わせないとは。孫を思うと胸が疼いた。勝気な家系のせいか、悪戯好きのわんぱく坊主だったが、男の子はそれぐらいのほうがいい。孫を思うたび、暖かい慕情が溢れ、何の連絡もよこさない娘に対しては冷たい怒りがとぐろを巻く。
 老婆はやにわに、目の前の食べ物に躍りかかった。怒りを発散させたかった。なにかにぶつけたかった。餓鬼のごとく咀嚼しては飲み込み、貪り食った。
 全てを平らげたあと、老婆の頬を涙が伝った。誕生日という記念の日に、老婆があげた声はうれし泣きではなく、すすり泣く擦れただみ声だった。
 明くる日。いつものように看護師が朝の世話をしようと部屋に入ってくるやいなや、おはようの挨拶は途中で途切れ、笑顔は途端しかめ面となった。
「これは、一体どうしたんです?」
 老婆の病室は糞尿塗れになっていた。シーツや壁などの至る所に染みのアートが出来上がり、下水道もかくやな激臭が辺りを満たしていた。
「食欲の秋だよ。見事だろ?」
 看護師はふんと鼻をならし、外へ出ていった。そのあからさまな態度に、老婆は満足げにひとつうなずいた。
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共通テーマ『七夕』

wikipediaより引用
 こと座の1等星ベガは、中国・日本の七夕伝説では織姫星(織女星)として知られている。織姫は
天帝の娘で、機織の上手な働き者の娘であった。夏彦星(彦星、牽牛星)は、わし座のアルタイルで
ある。夏彦もまた働き者であり、天帝は二人の結婚を認めた。めでたく夫婦となったが夫婦生活が楽
しく、織姫は機を織らなくなり、夏彦は牛を追わなくなった。このため天帝は怒り、二人を天の川を
隔てて引き離したが、年に1度、7月7日だけ天帝は会うことをゆるし、天の川にどこからかやって
きたカササギが橋を架けてくれ会うことができた。しかし7月7日に雨が降ると天の川の水かさが増し、
織姫は渡ることができず夏彦も彼女に会うことができない。星の逢引であることから、七夕には星あ
い(星合い、星合)という別名がある。また、この日に降る雨は催涙雨とも呼ばれる。催涙雨は織姫
と夏彦が流す涙といわれている。


僕の居住地域では、残念ながら明日は雨。ということは催涙雨だ。二人は会えない。一年間分の期待
が悲嘆の涙へと変わる。なんとも切ない話だ。しかし、可哀想だと思う一方で、天命であるところの
仕事を放棄した為に引き裂かれた自業自得の所業には「ざまぁ」と言わざるを得ないな?

「自業自得乙である。ざまぁ(笑)」

さらに二つの星の間は14光年ほど離れているらしく、光速でも14年ぐらいかかってしまうんだっ
て。つまり二人が光速で移動したとしても、1年に1回会うことは不可能なわけで。

「無駄骨乙(笑)」

とまぁ、このように思ってしまうのは僕が他人の不幸を喜ぶ性質のせいだ、というわけではもちろん
ない。けどもね、離れ離れになった背景を鑑みれば、可哀想だけどバカなとこしたんだからしょうが
ないね、とのほうへ心が傾くのは致し方ないんじゃないのかな?

「二人の心情を慮ることもできないのか」などと言う声が聞こえてきそうだけれど、なるほどご高説
はごもっとも。おたくのような感受性豊かな御仁はその想像力を駆使して語られない悲哀へと、セン
チメンタルジャーニーしちゃうんだろうな。でもさ、それってかなり危険な心の動きだと思う。
もしも、彦星と織姫が実は性悪だったら? 知る事の出来る一つの側面だけを見て、なんて可哀想な
人だろうと感傷し、語られない細部を類推して悲劇的な人物像へと無意識に仕立てあげる。
その方が物語として美しいから。その方が物語りに酔えるから。ある意味、自己陶酔ともいえるよね。
人は自分の信じたい事を信じる向きがあるし、それはそれでいいと思う。
けども。度が過ぎるとヤバイよね?

なぁんてことを星空のBelieveを聞いてて思いました。


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共通テーマ『ようかい』

現代女性の自己顕示欲と美への飽くなき追求は見ていて凄まじいモノがある。

もちろん、全ての女性がそうだという訳じゃない。ニュースなどでクローズアップされてくる狂った
女性を見て、「女ってのは度し難い馬鹿モノだな」と嘲るのは木を見て森を見ていない痴れ者だけど、
「そこ超えちゃう?」っていう地雷原を易々と跨ぐ輩は少なからずいる、ということは確かだな?

例えば90年代の終わりごろ辺りから東京を中心に一世を風靡した、といえば語弊があるが、十代を
中心に伝染した「ガングロ」や「ヤマンバ」などはその一例として特筆に価するな?
「男もやってたじゃん」なぁんてわざわざ口を挟むマンコの声が聞こえてきそうだけど、そんなこと
は些細な問題だよ。そりゃ中には男も混ざってはいたよ? でも圧倒的に女のほうが多かったよね?
大体だよ、かしましい女ってもんはね、押しなべて下の口も緩いの。そんなわけない? へえ、ほん
とに? じゃあ三顧の礼って知ってるかな? あっ、知らないよねごめん、中国の故事なんだけどね、
まぁ要するに、目上の人が格下の者に対して三度も出向いてお願いをすること、なんだけれど、これ
聞いて君、何か思い当たることはないかな? えっ、ない? 本当に? ……君って魅力がないんだ
ねぇ。あぁいや、馬鹿にしてるわけじゃないよ? ただ、そうすると君って人はだね、声をかけられ
れば誰彼となく付いていくアバズレなのか、それとも男という男から歯牙にもかけられないシコメか
はたまたウマズメなn

なんて連綿と続く思考の脇道に逸れて本筋をないがしろにするのはどうかと思うよ。

話を戻そう。美しくなりたいがために女は化粧を施す。それは当然だし大いに奨励するよ。がしかし。
いきすぎると問題だな? 美しさとはなんぞやと考えると、バランス、調和なんだと思うんだよね。
その常識的な美への平衡感覚を失った輩が「ガングロ」や「ヤマンバ」と成る。ひとえに目立ちたい
がために。肥大した自意識を満足させるために、常識から外れた事をやってしまう。それを見て、最
初は奇異の目で傍観していた輩も、学校という狭い世界でムーブになれば、あれ、意外とイケるじゃ
ん、なんて付和雷同する。そうして流行り病のように伝染拡大していったのが「ガングロヤマンバ」
ムーブメント。いま見れば「妖怪」といっても過言ではない様相だ。歴史を振り返れば、顔や身体に
紋様を施した事跡は世界中にあるけれど、それは主に儀式や祭礼のためであって、美しさへの為だけ
にこのような馬鹿げた事をしでかすのは現代に生きる女性たちだけなんじゃなかろうか。

妖怪と呼ばれるモノのほとんどは創作と云われているけれど、大元は民間伝承や伝説などを元にして
いる。はるか未来、現代が古代へと名称を変えたとき、歴史には残らないであろう、ホンの一時期の
美の変遷を元に、妖怪が誕生しているかもしれない。なぁんてね。
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共通テーマ『↓』

↓でググッていたところ、下向き矢印法なるモノに目が止まった。

ソレは認知行動療法という、精神疾患の為の治療方針の際に用いられる、抽出作業であるらしい。

認知行動療法とは?(wikipediaから引用)

 人間は世界のありのままを観ているのではなく、その一部を抽出し、解釈し、帰属させているなど
「認知」しているのであって、その認知には必ず個人差があり、客観的な世界そのものとは異なって
いる。それゆえ、誤解や思い込み、拡大解釈などが含まれた自らに不都合な認知をしてしまい、結果
として様々な嫌な気分(怒り、悲しみ、混乱、抑うつ)が生じてくると仮定している。認知療法では
不快な気分や不適切な行動の背景として「考え方」つまり「認知」に着目し、この不都合な認知⇒気
分の流れを紙などに書いて把握すること、また、それらに別の観点を見つけるべく紙に書いて修正を
試みる事が根幹である。その為に根拠を問うたりする。 それらの気分を生じさせる拡大解釈などを
アーロン・ベックに学んだデビッド・D. バーンズ(英語版)の1989年の著作The Feeling Good
Handbook[1][2]では "Cognitive distortion"(認知の歪み)という


その認知の歪みを炙り出す作業のことを、下向き矢印法という。具体的にどのように炙り出すのかは、
日本認知療法学会によるマニュアルを紐解く。

下向き矢印法① <自己へのスキーマ>
状況) 会社で私を残して上司が同僚と食事に行った

自動思考) 私だけ、上司に誘ってもらえない

自己について) 自分は他人に気遣ってもらえないタイプ

自己について) 自分は、愛されない人間だ

下向き矢印法② <世界へのスキーマ>
状況) 上司は自分に残業させて食事へ

自動思考) 一般職の女性社員だけ誘われた

世界について) 私は総合職女性だから誘われなかった

世界について) 仕事をがんばる女性は、嫌われる


スキーマとは、その人が無意識のうちにしてしまう、ある決まったものの見方・考え方の事。
自動思考とは、そのときに頭に浮かんだ考えやイメージの事である。

下向き矢印法とはつまり、マイナス思考やプラス思考の大元の素因であるところのスキーマ(認知の
異常・正常)を炙り出し、その素因を認知させる方法である。
そうして原因を明確にする事によって、ある程度、自己をコントロールさせる治療方針が、認知行動
療法。というのが、流し読みして得た僕なりの理解。

なわけだけれど、これってちょっと小説のプロットを作る作業に似てると思いませんか。物語の組み
立て方は人それぞれだろうけど、基本的に文章と同じで、プロットも5Wが骨格となりますよね。

Who(誰が)→主人公
What(何を)→目的
When(いつ)→時代
Where(どこで)→場所
Why(なぜ)→動機

この骨格にテーマをあてはめ、そのテーマを軸に【面白い】要素を取り入れていく。そうして肉とな
り血となった物語=主人公に命を吹き込むために、why.why.why.を連発する。何故そうする何故こう
する何故ああする。物語の作者とは考えや行動に影響するスキーマを洗い出す、下向き矢印法の名人
とも言えるのではなかろうか。

そう考えてみると、ある一つの疑問が浮かび上がってくる。いわゆる文豪と称せられる人間達の自死
率の高さだ。創作者としてバーチャルの、二次元上に過ぎないとしても、リアリティある人物を創り
込み命を吹き込むその道のプロ中のプロ達はなにゆえ自死を選んだのか。

僕の手元に精神科医である岩波明の著書『文豪はみんな、うつ』という新書がある。新書というモノ
は押しなべて薄っぺらい印象があるが、そこはまぁ入門用としての位置づけ、カテゴリにある新書に
中身を求めてもしょうがないわけで、ご多分に漏れずこの本も出来うる限り減塩しましたという塩梅
なわけですけれども、まぁそれは言わないお約束、というより、「お前が言うな」って感じですね、
ごめんなさい。

この本は、精神病のきらいがあった文豪を対象としており、全十人中四人が、自殺を遂げていたとさ
れています。芥川龍之介・太宰治・有島武朗・川端康成。縊死・心中水死・心中縊死・ガス死とまぁ
死に方は様々ですが、その他にも、広義的な自殺というか破滅願望というか、文豪という名につり合
わぬ、幸福とは縁遠い人生を送った者が多かったようです。

その中でも、島田清次郎という作家は、お題である『↓』にピンポイントで当て嵌まる人ですので、
ここで一筆したためさせていただきたく早漏。詳細は島田清次郎(wikipedia)から辿れる評伝でも読んで下さい。
そして読む価値があったらばお教えいただけたら嬉しく存じます。


島田清次郎とは、世を蔑み世に蔑まれた男である。評伝のタイトル「天才と狂人の間」とは言い得て
妙だ。馬鹿と天才は紙一重。知れば知るほどそう思う。

生後まもなく父を亡くし、母とともに身を寄せた実家はときに夜の女の顔も見せる芸妓街、という生
い立ちには同情するが、その境遇と頭抜けた知能による所為なのか、元々そういう性質だったのか、
傲岸不遜とも言える人間性は受け入れがたい。恩人の持ち物を勝手に拝借したり、妻に暴力を振るっ
たり、挙句の果てには婦女誘拐・監禁事件を起こしたり。けれど、精神病院で病死した顛末を思うと、
自分も世渡りが上手く出来なかっただけに、どこかシンパシーを感じてしまう。
二十歳のときに著した自伝的小説『地上』がベストセラーとなり、一躍時の人となったのもつかの間、
素行の悪さが祟ってわずか三十にしてこの世を去る。生活破綻者の一人として一時は成功したカレを
嫉妬しつつも、もっと上手くやれたんじゃないのかと悲しく思う。

ちなみに『地上第一部:地に潜むもの』は青空文庫で読む事ができる。僕は途中まで読んで投げ出し
たけれど、芸妓として生きる女達のやるせなさには心に訴えかけるモノがあった。興味があれば是非
一読を。きっと、昼ドラを思わせるドロドロした展開を芸術の域にまで昇華できなかった若さに投げ
出したくなるから。
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共通テーマ『梅雨』

目が覚めてカーテンをひくと、どんよりした空からしとしとと、またはざぁざぁと雨が降っていた。
梅雨前線到来である。カビとダニと湿気の季節である。それ単体ではどうということはない、詰まら
ぬ事象にすぎないし、好きというわけでもないけれど、変化を好みながら変節を望まない、起伏と向
上心のない人生に、雨でもカビでもダニでもいいから変化をもたらしてくれるなら歓迎するよ。が、
長期間続くとなると、話は別だ。何故かってうんざりする。「だって」「やっぱり」「そしたら」等
と言うメンヘラの繰言のように止む事がない。さながら天の愚痴を聞いているような気分。

変わり映えのしないいつもの日常に、纏わりつくじめじめとした空気が加わる。それだけで、自分が
なめくじになったかのような錯覚に陥らせるのだから、梅雨と引きこもりの相性は良くないと言える
だろう。雨だと外に出る理由が少なくなるから好きだの、子供なんかの喧騒が消えるから好きだの、
自称ニート及び引きこもりの社会性廃棄物はよくそう言うけど、僕は違う。少なくともそれが理由で
雨の好悪に繋がるわけじゃない。僕が雨を嫌うのは、憂鬱を呼び込むからだ。そしてその憂鬱が、記
憶の澱にまで深く沈んだとき、思い出したくもない事柄に思いを寄せずにはいられないからだ。

一人、心の内で過去と対峙しながら物思いに耽る。梅雨とはモノローグの季節なのだと僕は思う。

そこで今回は、特に印象深いモノローグを多用した作品について触れよう。

まず思い浮かんだのは【彼氏彼女の事情(アニメ)】である。1998年10月から翌年三月まで放
送されていた、エヴァの庵野秀明監督作品だ。世紀末、ノストラダムスの予言が巷を騒がせていたお
りもおり、僕は一向に捗らない受験勉強に嫌気が差し、半ばやけくそで滅亡しろと密かに信じていた、
というよりは願っていたくちである。今でも終末予言なんかを聞くと、少なからず心が躍る。
そういう鬱屈を抱えていた時期に、このアニメが放送された。最初は少女マンガ原作ということもあ
り、あの時分の男子なら共通の偏見、女がみるモノを男がみるなどナヨナヨしたオカマ野郎といった
風潮のせいか、観る事を躊躇させる気持ちがあったのだが、一家団欒の席でたまたま点けたテレビが
このアニメだった事と、家族の誰もが他の番組に変えようとしなかった事もあってか、仕方なくなん
ともなしに観ていたところ。これが大ハマリしてしまったのであった。
内容は、才色兼備な男女の恋愛模様であるが、一見して優等生な仮面の裏には、正反対の浅ましい顔
が隠されていて――。という、誰しもが持っている二面性を、ときにシリアスに、ときにコメディに
と、モノローグを多用しながら描き、それは当時の僕にとって斬新であり、かつ高校生活という、す
ぐ目の前の未来からのおとないのような気がして、未知の世界への期待を刺激しまくったモノである。
かといって、その影響を受けて受験勉強が捗ったかといえば、それはまた別の話であって。そもそも
勉強なるモノが嫌いだった僕が一時的にやる気を奮い起こしたとしても、しょせん焼け石に水、付け
焼刃は付け焼刃に過ぎないという事でして、ものの見事にサクラチルわけなんですけれども、それは
おいて置いて。印象に残っているシーンを挙げていこう。

1.妹爆発
ツーチャンネルでお馴染みのネタはこれが元ネタなのかどうかは知らないけど、原作と比較してコメ
ディ色の強い本作ではこういった破天荒なシーンが多く見られる。なんで爆発したのかよく覚えては
いないけれど、多分世紀末のせいだろう。

2.劇画タッチの同級生に扮したおっさん
ラスト近辺、唐突に現れ唐突に語りだす謎のおっさん同級生。その真の姿はクラスメートの姿を借り
たスタッフの誰かの顔なんだろうけど、このアニメ、後半になるにつれて悪ノリが過ぎる気がするの
はひとえにアニメが原作に追いついてしまったための苦肉の策、というか遊び心の一つなんだろうな。

3.夏休みのデート中、にわか雨に見舞われ――
水に濡れて重くなった薄衣が身体に吸いつき、露わになった女体のラインがエロスを掻き立て、それ
までの空気が一変する。ありがち、だからこそ映えるこのシチュエーションに、ドキマギしない輩は
いないのではなかろうか。切実に思う、経験してみたいモノだと。

うろ覚えで書いているため、間違ったところがあるかもしれないが、ざっとこんなもんだろうか。

思春期の男女の内面と葛藤、心の触れ合いについて、当時の僕は、そこまで考えるのかと、そこまで
思いめぐらすのかと、自身の交友関係と照らし合わせてみて、ひどく薄っぺらいモノに感じたのを覚
えている。そんな風に本音でぶつかり合い、絆を強めていく行為が羨ましく、また妬ましくもあった。
おススメのアニメである。


さて、次に紹介しようと思ったのは「放浪息子」で有名な志村貴子の初連載、「敷居の住人」である
が、めんどくさくなったので割愛する。一言添えるなら、放浪息子が好みに合うのならば、敷居の住
人もきっと好みに適う作品であるだろう、ということ。ではまた来週。
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共通テーマ『風呂』

風呂でググッていたところ、こんな記事を見つけた。

鶯谷の名店「電マ戦隊イラマチオン」摘発 -東京-

ありふれた淫行事件だけれど注目すべきは店名だよ。「電マ戦隊イラマチオン」。響きがいいよね。
思わず噴いちゃうフレーズ。良いセンスしてると思う。一杯引っ掛けた帰り道、キャッチに捕まって、
「どうですお兄さん遊んで行きませんか。電マ戦隊イラマチオンって言うんですけどね、今ならうん
とサービスしますよ」なんて言われたらその気が無くてもちょっと興味が沸くよね。
なにそれどんな店だよって。いや、店名を文字通りに受け取ればある程度の察しはつくけどさ。面白
そうだから行ってみよう的なノリ、集客効果が見込めそうだと思わない? 少なくとも僕は好奇心を
そそられてまんまと引っかかっちゃうな。まぁでも往々にしてそういった場合、失望が待っているん
だけどね。高い買いモノは事前に下調べが必須、これ常識なのは重々承知してるよ?
けどさ、冒険しない人生なんて味気ないじゃない? たとえ期待に反した結果をもたらすとしても、
一時の夢、一時のスリルが明日への活力に繋がると僕は思うんだ。そもそも人間なんて享楽的な生き
物なんだから我慢は毒、膿みを吐き出さなきゃ身体に悪いってもんよ。
健全な精神は健全な肉体に宿る、逆もまた然り、ってことなんだよね。これニートの教訓。

とまぁんなもんはおいて置いて。お風呂に舵を戻すとしよう、と言っても電マ戦隊のせいかおかげか、
風呂とはいえ巷では泡やら何やらの隠語で称される淫靡な世界を彷徨ってしまっちゃった次第でね、
いやはやさすがは三大欲の一翼を担う性欲。改めてすごいと、そう思いました。

それでまぁ色々と大人なサイトを見てたんですけど、キャッチコピー? 煽り文句って言うんですか、
あれふざけた店名のところはどこもチャラくてちょっと面白い。
普通の、ありがちな店名ではシンプルなサイトデザインが多く、文言も紳士然としているのに比べて、
おふざけ系では広告が多い上に赤やピンクといったけばけばしいデザインが目に刺さり、文言はよく
分からない意味不なフレーズがちらほらと散見されるような気がしなくもない。
特に印象深いのが「スパイラル」。渦巻き線ってなんだよ? 
あと「業界未経験」「~系」「~級」の三語は三種の神器かってくらい目に付く。常套句すぎて何も
言っていないに等しいよねこれ。

ふざけたサイトで思い出したけど、パチンコ系も相当ふざけたところ一杯あったよね。ググッったら
色々と懐かしいもんが出てきてワロタ。

動画ですまんが特にこれは永井と愉快な仲間たちのおかげか、元々面白いネタがさらに面白くなって
いると思う。9:10~見てね。


       ____
     /_ノ ' ヽ_\
   /(≡)   (≡)\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ ジャンジャン…ああっ、出るお、出るお…バリバリ
  |     |r┬-|     |
  \      `ー'´     /        ジャンジャン…まだまだ出るお……ウッ!


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目からうろこ

僕はいわゆる素人童貞というカテゴリーにいる。彼女いない歴=年齢なのは言うまでもない。人並に
恋はした。けれど恋愛には持ち込めなかった。それは生来の気弱さと、自分本位な性根のためだった
せいかもしれない。当時を思い返せば、無駄にプライドばかり高く、何の根拠もない自信に溢れてい
て、それは裏を反せば、中身のない器をこれまた中身のない代物で蔽ってしまおうという噴飯モノの
自己保全だけれど、誰しも若かりし頃にはそういった鎧を身に纏うのではなかろうか? そしてその
鎧が効力を発揮しすぎてしまい、本来、倒したいはずの相手の攻撃を受け流してしまうとった本末転
倒も甚だしい事態を招いたことがあるのでは?

例えばこんな事があった。僕が十代の頃、モバイル掲示板にスタービーチという盛り場があり、よく
そこで友人とともにマンコキープに現を抜かしていたときがあった。その友人とは中学は一緒でも、
せいぜい顔見知りといった具合で、お互いそういえばそんな奴もいたっけと希薄な印象だったのだが、
偶然にも同じ夜間学校に通うようになった事もあってか、人見知りな僕にしては割かしすぐに打ち溶
けることが出来た数少ない友の中の一人である。
引っ込み思案な僕に対して、彼はイケイケドンドンな性質で、若者らしい無鉄砲さを多分に持ち合わ
せていた。その所為もあってか、僕は彼に引きずられるように、コバンザメのごとく、彼のすること
為すことに付いて回るようになり、ネットナンパをおこなう際にも、ほぼ彼に任せ通しであった。
そのせいか、はたまた思春期にありがちな捻くれた自尊心のためか、僕の中では仕方なく付き合って
やっているような、不遜な心根が少なからずあった。
だからだろう、彼が取り持ってくれた場に行っても、僕は変に格好つけたりして、女の子と上手く会
話など出来やしなかった。合コンとは名ばかりの、スーパーの駐車場や公園といったヘンテコな場所
で、ビール片手にお菓子をつまみ、話に花を咲かせることなど出来やしなかった。したことと言えば、
妙に足を組みなおしたり、セットした髪の毛先をいじったり、鼻にかかった声や持って回った言い方
をしたり、それはもう痛々しいとしか言いようが無い言動だった。
見当違いの自尊心という名の鎧がその効力を発揮し過ぎてしまった好例である。

そんなこともあって、僕は女性に対して、相手の気持ちを推し量り、シーソーゲームに興じるといっ
たようなコミュニケイトは出来なかった。それは十代の花が散った後も変わらなかったが、そんな僕
にも転機が訪れた。

持て余した煩悩を自慰によって慰めながら、フラフラと期間工として地方を回っていた頃のこと。
滋賀県のとある工場で職を得た僕は、同期のおっさんから「観光にでも行こうや」と滋賀名物雄琴に
誘われた。雄琴といえば言わずと知れた風俗街である。風俗には興味があったけれど、正直、そんな
所で童貞を失うのは負けといった気持ちが少なからずあり、乗り気はしなかったのだが、そこは押し
に弱く、動機を他人に委ねがちな僕の事である、押し切られてしまった態で同意したのであった――。



さて、ここでようやく表題へと至るわけである。「目からうろこ」。ここまで読んでくれた忍耐強く
賢明なる読者には容易に想像のつく事柄ですね。そう、脱童貞という過程をへて、女性への少なくな
い幻想にピリオドを打ったということです。
確かに、以前と以後を比べてみれば、女性に対して身構えるようなバリアーは多少、薄れましたし、
セックスも期待していたよりは味気なく、「こんなもんか」と幾分、失望しもしました。
理想と現実のギャップに少しばかり困惑しつつも、まぁ何でしょうか、ある種の自信を得ちゃったん
ですよ。スカイプ掲示板なるいかがわしいところへ入り浸ったり、デリヘルを呼んで「チェンジ」と
言ってみたり、ね。
今まで絶壁のようだった崖の先へ少々身を乗り出しちゃったわけ、一人で行く勇気なんてこれっぽっ
ちも持ち合わせていなかったのに、夜の蝶が舞う街へと足を忍ばせたり。

そう考えると良い面もあったと思う反面、何か大事なモノを失くした気がするのは何故なんでしょう。
確かに、未知の体験を経ることによって新たな道が開けたのは事実です。せっくるも、回数を重ねる
毎に、様々な果実の味わい方というモノを学びましたし、また女性との会話でも同様です。

でも。それでも。童貞の頃には在った性への憧憬や純真さを失った今、僕は思うのです。

知らないほうがよかったんじゃないかな、とね。

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